LSO/ラトル:腹を刺し耳を劈くゴング・ショー2011/03/07 23:59

2011.03.07 Barbican Hall (London)
Sir Simon Rattle / London Symphony Orchestra
1. Messiaen: Et exspecto resurrectionem mortuorum
2. Bruckner: Symphony No. 9

先日のベルリンフィルで充実したマーラーを聴かせてくれたラトルは、さすがイギリスでは非常に人気があって、この演奏会もLSOとしては珍しく早々とソールドアウト。他でLSOがソールドアウトだったのは昨年2月に五嶋みどりが出た日くらいしか記憶にありません。かく言う私も、このチケットはシーズン前には躊躇して買わなかったので、やっぱり聴きたいなと思ってサイトを見たときにはすでに売り切れ。しつこくリターンをチェックして、ようやくゲットしました。しかし今日のプログラムはメシアンとブルックナーという、私にとって全く明るくない作曲家ばかりですので(それが躊躇していた理由ですが)、書けることが少ないので今日は楽です(笑)。

1曲目のメシアン「われ死者の復活を待ち望む」は金管、木管と金属打楽器のための30分くらいの組曲で、全く初めて聴く曲です。弦楽器を欠く編成なので通常弦が座る場所がごっそり空いていて、指揮者がぽつんと一人で完全に奏者と対峙する形になっていました。ひな壇最上段に特大のタムタムから極小のゴングまで10種類のサイズの銅鑼と、50個はあろうかと思われるカウベル、それにチューブラベルが並ぶ様は壮観でした。これは宗教音楽のようなんですが、これのどこがキリスト教教会で演奏されるべき曲なのか、私の理解をはるかに超えています。テイストはものすごくアジアンで、2曲目は日本の高野山祭囃子風だし、4曲目なんかもインドネシアのガムラン風に聴こえてしょうがなかったです。アマチュア打楽器奏者の端くれとして、あんな特大サイズのタムタムがズゴォォンと打ち鳴らされるのを直に腹で受けられるのは、冥利に尽きます。他にもサイズの違うタムタムをデュアルでトレモロ強打など、絶対に録音には収まらない一瞬一瞬にいちいちしびれました。曲の内容はよく理解できませんでしたが、これは本当に生で聴けて良かったです。しかしあのタムタム、ゴングは全部LSOの所有物なんだろうか。

ブルックナーは正直、ずっと苦手な作曲家です。鶏が先か卵が先か、興味を覚えないので聴き込むこともなく、従って交響曲もなんだか区別のつかない曲が9曲もあって(0番を入れると10曲か)、しかもどれも長大で冗長なので聞きかじるとっかかりも掴めず、という感じでここまで来ました。同じ長大なシンフォニーでもマーラーはどの番号も(もちろん区別しながら)好んで聴くので、やっぱり音楽自体がまだ自分の性に合わないのだと思います。ということでブルックナーはできることなら避けてきたので実演で聴く機会もあまりない中で、9番は例外的にこれで3回目。そもそも9番以外では、4番を約30年前に京大オケで聴いたのと、3番、7番をウィーンフィルで聴いたので全てです(一応CDは全曲持ってますが。本当は5番が一番好きなんですが実演ではまだ未聴です)。

「ブルックナーらしさ」とか演奏様式の王道なんかも全然要領を得ないので、何と評してよいかいつも困るのですが、ラトルのは「らしい」演奏とはちょっと違うのではないかと感じました。先日のマーラーと同様に、繊細な表現と大音量の咆哮が行き来するダイナミックレンジの広い演奏で、聴き応えは十二分です。「仕掛け」がどのくらいあったのかはわかりませんが、例えば第2楽章のスケルツォで主題のトゥッティが再現される箇所の直前でえらく無理なアチェレランドをかけたり(ティンパニが出だし落ちてしまいましたよ)、そのあとのトリオではやたらと軽く陽気に歌わせてみたり、変化に富んで面白みのある演奏だったとは思います。コントラバスをホルン・ワーグナーチューバの後ろ、ひな壇最上段に置いて、逆にティンパニは舞台上手の端に押しやるなど、楽器の配置に細かい配慮も見られました。かと言っておおらかさがない演奏では決してなく、むしろたいへん朗々としていました。

実はこの9番はデイヴィス/LSOのライブ盤を持っていまして、今までは全然好きな演奏ではなかったのですが、今日の演奏会が終った後にあらためて聴いてみたら、これが結構良いんです。細かい考察ができ切らずうまく言葉にできないのですが、ラトル/LSOの演奏に欠けていたものが、そこにはあったということにすぐ気付いたからだと思います。おおらかさだけでなく、デイヴィスのような「ゆるゆるさ」もブルックナーには必要なのかもしれません。ブルックナーは奥が深い。まだまだその道に迷い込む覚悟ができていません…。

まあしかし、ラトルはラトルでラトル節全開だったと思いますし、LSOであろうともきっちり手玉に取って思う通りに鳴らし切っていたのはさすがです。今シーズンのロンドンではあとOAEがありますので、そちらも楽しみに待っています。

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_ Voyage to Art - 2011/03/09 07:58

 2週間前にベルリンフィルとともに圧倒的な演奏をしたラトルが、ロンドンシンフォニーに登場。メシアンとブルックナーという、一見ラトルらしい、でもよく考えると両極端な組合せのプログラム。
 メシアンは非常に興味を持って聴いている作曲家だけれど、彼の音楽は僕の中には素直には入ってこない。一度頭の中で分析し、メシアンのエピソード(あまり知らないけど)なども頭の中で援用しながら、何とか自分の中で分かる形に組み直しているという感じ。でもメシアンの音楽が嫌いという訳でもなく、例えば彼の代表作のトゥランガリーラ交響曲はロンドンに来てから二度、実演で聴いているし、機会があれば聴きに行くことを躊躇わない。...

_ miu'z journal *2 -ロンドン音楽会日記- - 2011/03/13 02:56

07.03.2011 @barbican hall

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