BBCプロムス:ベルリンフィル/ペトレンコ:生まれ変わった「チャイ4」 ― 2026/09/02 23:59
2026.09.02 Royal Albert Hall (London)
BBC Proms: Berlin Philharmonic Plays Elgar and Tchaikovsky
Kirill Petrenko / Berliner Philharmoniker
1. Elgar: ‘Enigma’ Variations
2. Tchaikovsky: Symphony No. 4 in F minor
BBCプロムスにはほぼ隔年で、ウィーンフィルと交互に登場するベルリンフィル。ペトレンコの振るベルリンフィルは今年5月にウィーンで聴いたばかりですが、手垢にまみれたカラヤン時代のオハコであるチャイコフスキーなんかをメインに持ってくるのは、尖ったペトレンコのイメージに合わず、らしくない「普通の」プログラムに見えました。
1曲目のエルガー「エニグマ変奏曲」は、たまたまですがこのところ連続して聴くことになり、ここ3ヶ月の間で3回目です。イギリス人にとってはもちろん定番の人気曲ですが、ベルリンフィルのエルガーは自分のイメージがなく、あえて今回のツアー用のサービスで組み入れたレアものではないかと思いましたが、よく考えたら前任のラトルはイギリス人だからエルガーとか絶対取り上げてるよな、とも思い直しました(真相は知りません)。
演奏は、質実剛健なドイツ風、穏健素朴なイギリス田舎風といった主張は全く感じられない無国籍メトロポリタンの丁寧な演奏でした。ベルリンフィルは奏者それぞれがもちろん高レベルで、繊細から爆発まで自由自在、容赦ない高速パッセージも難なく弾き切って、さすが!上手い!という賞賛しか思いつきません。省略されることも多いオルガンが最後ガッツリ入っていましたが、それを上回るオケの馬力は驚嘆です。個人的には、ティンパニが見た目若そうですがめちゃめちゃ上手くて感服しました。音に芯があってブレないし、強打弱打どちらも音がストレートに突き抜けて、バチを小まめに持ち替えてロールも完璧で、どこを取っても素晴らしいプレイでした。
メイン、ベルリンフィルのチャイコフスキーというと私の世代ではどうしてもカラヤンの亡霊が付きまとって離れないのですが、亡くなってもう40年近く経つので直接その指揮に触れた団員も今はほとんどいないと思われますし、カラヤン以後にそのスタイルを引き継いだ弟子が音楽監督になったことはなく、むしろその伝統から離れて独自の路線を築こうとする人たちばかりだったと思いますので、今なお亡霊に囚われているのは古いレコード・CDを熱心に聴き続けるクラヲタ老人だけなんでしょうね。
ロシア出身のペトレンコのチャイコフスキーは予想通り、郷愁を誘うような感傷的なものではなかったのですが、何も気を衒ったことはしてないものの、あまり他で聴いたことがない個性的な演奏でした。指揮棒によって外からビートを与えるのではなく、常に内から湧き出てくるリズムだけでドライブしている感じで、だからリズムは頻繁にうねるのですがぎこちなさはなく、流れは極めてナチュラル。とはいえ、後半の2楽章は内なるリズム自体がハッキリとしたビートで表出して、さらに高速化し、音圧も極限まで開放されて行きます。これを余すところなく実現するオケのハイスペックは今更言うまでもなく、ティンパニも相変わらず印象に残る良い爪痕を残しました。やはりベルリンフィルはハズレなし、世界最高峰は揺るぎありません。

英語版「となりのトトロ」:手作り・アナログのアイデア満載、楽しい舞台 ― 2026/09/04 23:59

2026.09.04 Gillian Lynne Theatre (London)
My Neighbour Totoro - based on the 1988 film "となりのトトロ" written by Hayao Miyazaki of Studio Ghibli
Royal Shakespeare Company's Production
Phelim McDermott (Director)
Joe Hisaishi (Music Composer/Executive Producer)
Tom Morton-Smith (Music Adapter)
Helen Chong (Satsuki), Victoria Chen (Mei)
Dai Tabuchi (Tatsuo), Phyllis Ho (Yasuko)
Jacqueline Tate (Granny Ogaki), Steven Nguyen (Kanta)
Natsumi Kuroda (Tsukiko), Richard P. Peralta (Hiroshi)
Kumiko Mendl (Nurse Emiko), Sango Tajima (Miss Hara)
Rachel Clare Chan (Kaze No Koe/Singer)
ご存知ジブリの名作長編アニメ映画「となりのトトロ」をロイヤル・シェークスピア・カンパニーが舞台化したプロダクションです。2022年にバービカンシアターにて初演が行われ、2024年にかけて断続的に上演されたのち、2025年からロンドン・ウエストエンドのジリアン・リン劇場に場所を移し、ロングランを行っていましたが、ついに来年1月で終了するとのことで、今のうちに見ておこうと思い立ち、出かけました。この劇場のルーツを辿ると16世紀のエリザベス朝まで遡ることができるそうですが、現在の建物は1973年にニューロンドン劇場として再建されたもので、2018年にジリアン・リン劇場に改名されたということです。キャパは千人ちょっとのこじんまりとした劇場で、どの席からでもステージは見やすそうな感じがしました。
場内はやはり子供連れ家族が多かったです。「となりのトトロ」はそれこそ自分の子供がこのくらい小さいころにDVDを飽きるほど繰り返し見た(見させられた)ので、しばらくちゃんと見てないとはいえ、音楽とストーリーは頭に刷り込まれています。役名や地名は映画のままだし、セリフもところどころで日本語のフレーズが散りばめられていて、無理やり英語化せずに原作の世界観を尊重しているのは嬉しい限りです。舞台装置は目まぐるしく変わり、このAIの時代にCGとかプロジェクションマッピングに一切頼らず、数々のアナログなアイデアが非常に心地良かったです。
大筋のストーリーはアニメと同じですが、たくさん出てくる空想上の生物をどう表現するのだろうと思っていたら、Kazegoと呼ばれる黒子のパペッティアが大活躍で、ススワタリも「そう来るか」と感心すること請け合いです。何と言ってもトトロとネコバスの大きさはインパクト大です。一方でアニメと大きく違うのは、舞台にほぼずっと大きな月が出ていて、基本は夜の風景であり、異世界感が強い点です。ここは舞台化に際し、劇場で映えるように世界観を修正するにあたっての重要ポイントだったと思いました。
キャストは中華系を中心に、日系、東南アジア系の役者で概ね固められていました。もちろん、皆さん英語はネイティブレベル。特にマイクを仕込んでなかったと思いますが、テンション高く、よく通る声でした。
バンドはボーカル、ホーン、ヴァイオリン、チェロ、ドラムセット、パーカッション、ウッドベース、キーボードといった構成。舞台の左右に0階、1階の2階立てでそれぞれミニピットがあり、さらには舞台上の奥側にも舞台装置の木の上にバンドを配置し、立体的な生演奏なのが良いです。楽器の人はさすがに動き回れないのですが、ボーカルは各ピットと舞台上を行き来していろんな場所で歌っていました。音楽は久石譲オリジナルの映画サントラからアレンジされたものですが、歌の歌詞は半分くらい日本語のままでした。
ちなみに見に行ったのはAcorn Performanceというアクセシブル公演だったので子連れ家族が多かったですが、大人のカップルもそこそこいて、子供の真ん前の席でいちゃついて肩を抱き肘が大きく後ろの席にはみ出していて、迷惑この上ない輩もいました。子供にとって大きい大人ははっきり言って観劇の邪魔ですから、ちょっとは周囲に気を配り、「ここでは自分は邪魔者だ」という立場をちゃんとわきまえて欲しいです。
舞台上は飽きさせない凝った仕掛けが多く、役者の熱意も大いに感じられて、たいへんよくできた舞台にいたく感動したと同時に、子供が小さかったころを思い出してホロリときてしまいました…。

ボン・ジョヴィ@ウェンブリースタジアム ― 2026/09/06 23:59

2026.09.06 Wembley Stadium (London)
BON JOVI - Forever Tour
Jon Bon Jovi (vocal, guitar)
David Bryan (keyboards)
Tico Torres (drums)
Hugh McDonald (bass)
Phil X (guitar)
John Shanks (guitar)
Everett Bradley (percussion)
このライブ、気づいたときにはほとんどソールドアウト、300ポンド以上のVIP席がリセルでちらほら出ているのみだったので、これはさすがに行けないなと思っていたら、直前になって下級クラスの席が追加でドカドカと出て来たので、思わず条件反射でゲットしてしまいました。7月に行ったデフ・レパードと比べると、ボン・ジョヴィはそんなに思い入れがあるバンドではなかったものの、自分のバンドで何曲かドラムをコピーしていたし、ヒット曲が多いので単純にライブは楽しめるのではないかと。また聖地ウェンブリースタジアムにはまだ入ったことがなかったので、その興味もありました。
この「Forever」ツアーは7月にスタートし、ニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンで9日間のライブを敢行したのち、エジンバラ、ダブリン、最後はロンドンで3日間行うスケジュールになっています。アルバムをリリースした2024年からちょっと時間が経っていますが(このときはシングル第一弾の「Legendary」が山下智久主演のテレビドラマ「ブルーモーメント」主題歌に使われたりもしたのでよく聴きました)、ジョン・ボン・ジョヴィが2022年に受けた声帯インプラント手術以降で初めてのツアーであり、十分なリハビリを行う時間を考慮し、慎重にスケジュールを組んだものと思われます。ボン・ジョヴィは全盛期のころからすでにライブでは半音下げチューニングでやっていたので、もとよりそんなに頑丈な喉ではなかったんでしょう。
ウェンブリーアリーナとO2アリーナは行ったことがありますが、やはり9万人収容のウェンブリースタジアムのデカさはケタが違います。駅からスタジアムに向かう表参道からしてもう人人人の大渋滞。場内に入ってみると、ステージの遠さもケタ違いで、大型スクリーンすら小さく見えます。よく考えると野外のスタジアムでライブを見るのは、1982年の阪急西宮球場で見たクイーン「Hot Space Tour」以来かも。元々、音楽はジャンルを問わず静かに耳を傾けたいほうで、野外ステージとかフェスは苦手なのでした。
このツアーでエジンバラ及びロンドンのオープニングアクトはジェームズ・ベイだったのですが、よく知らないし見送りました。ぼちぼち日も暮れかかる7時20分ごろにボン・ジョヴィのライブがスタート。ステージから一番遠いショートサイドの後方エリアだったので、やはり肉眼で見えるボン・ジョヴィは豆粒どころかケシの実くらいのサイズ。大型LEDビジョンをオペラグラスで見てちょうどいいくらいでしたが、ジョンのバネ感があって溌剌としたパフォーマンスと、眩しい笑顔は実にアメリカンな明るさで、やっぱりカッコ良かったです。髪も短くなって白くなり、時々鹿賀丈史に見えてしまいますが、良い歳の取り方をしていると思います。ジョンは64歳、最年長のヒューは75歳、最年少のフィルも60歳なので、全員60歳越えのバンドになってしまいました…。

やはり「You Give Love a Bad Name」「Born to Be My Baby」「It's My Life」「Livin' on a Prayer」といったメガヒット曲は特に盛り上がりました。隣席の母娘連れと思しき人々は、娘がずっと大人しく座っていたのに対し、むしろ母の方がノリノリで踊りまくってました。しかし、正直言ってPAの音はひどいものでした。ボーカルは割れてるし、ベースとキーボードは終始何やってるかほとんどわからないくらいのグシャっとした音響でした。ジョンは、声帯手術のリハビリが上手くいってるようで、おそらくキーは下げていますが、ちゃんと声が出て歌えていました。また、サビのキツいところはマイクを向ければ観衆が全部歌ってくれるので、無理する必要は全くありません。ボン・ジョヴィのロンドンでの人気の凄さに驚くとともに、やっぱり持つべきものはヒット曲だよなあと、あらためて思いました。
Set list:
With a Little Help From My Friends (The Beatles cover)
Beautiful Drug
We Weren't Born to Follow
Lost Highway
You Give Love a Bad Name
Born to Be My Baby
Legendary (with James Bay)
Whole Lot of Leavin'
Bed of Roses
Have a Nice Day
These Days
This House Is Not for Sale
It's My Life
Livin' on a Prayer
Raise Your Hands
I'll Sleep When I'm Dead
Hey God
Keep the Faith
Encore:
I'll Be There for You
Wanted Dead or Alive
Bad Medicine
Always

BBCプロムス:マーラー・アカデミー管/シュタイネッカー:温故知新の第9番 ― 2026/09/11 23:59

2026.09.11 Royal Albert Hall (London)
BBC Proms: Mahler’s Ninth with the Mahler Academy Orchestra
Philipp von Steinaecker / Mahler Academy Orchestra
1. Mahler: Symphony No. 9
今年のBBCプロムス、ラストナイト前の最後の公演は、シュタイネッカー指揮のマーラー・アカデミー・オーケストラという、正直言うと初めて名前を聞く人たちのコンサート。マーラー・ユーゲント・オーケストラは聴いたことがありますが、最初はそれと混同していました。いろいろ調べてみると、クラウディオ・アバドらによってイタリアのボルツァーノに設立されたグスタフ・マーラー・アカデミーという研究機関に所属し、マーラーの楽曲に関する学術研究成果を具現化する目的で結成されたプロジェクト・オーケストラとのこと。メンバーはプロ(コンセルトヘボウやベルリンフィルなど超一流の団体からも参加)とアマ(世界中から集まった若手音楽家)の総勢100名ほどの混成です。ですのでメンバーは流動的ですし、技量レベルもレコーディングや演奏会ごとにバラツキは大きいと思われます。
一方で、マーラー・ユーゲント管弦楽団、マーラー室内管弦楽団というより著名なオケもあり、マーラー・アカデミー管弦楽団も含めてこれらは全てアバドが設立に関わっていることがよけいにややこしさを増していると思うのですが、ざっくり言うと、ユーゲントは旧共産圏出身の若手音楽家の育成及び雇用の目的でウィーンに設立されたユースオーケストラ、室内管はユーゲント出身の音楽家が卒業後にも集って音楽を高めるための遊牧民的オケ(ただし力量はハンパない)、という明確な性格の違いがある別団体になります。現在マーラー・アカデミー管の音楽監督兼キュレーターのシュタイネッカーはかつてマーラー室内管のチェロ奏者で、その後アバドのアシスタントなどを務めて指揮者としてのキャリアを重ね、2019年には都響への客演も果たしています。
前置きが長くなりましたが、自分が不勉強なだけで、このシュタイネッカーとマーラー・アカデミー管によるマーラー交響曲の「ピリオド演奏」は好評を集める一方で賛否両論飛び交う議論にもなっているそうです。マーラーが作曲した当時の楽器方式と演奏様式を追求し、その後の楽器の進歩と様々なスタイル変遷の色眼鏡をいったん剥ぎ取って、作曲者がスコアに込めた楽曲の本来の姿を蘇らせるというプロジェクトの意義は理解します。しかし、バッハやモーツァルトと違ってマーラーは20世紀まで活躍した人であり、その弟子筋の巨匠たち、第9番の初演を指揮したワルターは1962年まで生き、クレンペラーも1973年まで生きて、彼らが残した数多くのステレオ録音は今日でも広く愛聴されているのがクラシック音楽の世界なので、歴史上の人物ではありながら現在と地続きで繋がっている感覚はあります。楽器や演奏スタイルがそんなに本質的に違うものなのか、ピリオド系という仮面を被っているが実は単なる演奏解釈の違いだけの場合とどこまで区別ができるのか、という疑念が、聴く前からいっぱい頭に浮かびます。

ロイヤル・アルバート・ホールのステージは翌日のラストナイト仕様ですでに張り出しが組み立てられており、その分立ち見のスペースが少し後退させられていますが、デッドスペースを作らないで、この演奏会が終わってからの組み立てではダメだったんでしょうかね?ステージを観察すると、ティンパニはペダル式ではないものの、今でも珍しくないシングルスクリューのモダンなチューニング方式で、そしてこれはこのホールの事情だったかもしれませんが、ステージの最後段中央に位置するコントラバスの上手にファースト・ティンパニ、下手にセカンド・ティンパニを置く対向配置。とは言ってもこの曲のセカンドは第1楽章の一部しか出番がないため、第2楽章以降はグロッケンシュピールにシフトしていましたが。大太鼓は今との比較だと小ぶりで、櫓に置くロールしにくいタイプ。管楽器の構造には明るくないのですが、金管は自分の位置からそもそもよく見えず、チューバが小ぶりだったくらいしか違いがわかりませんでした。木管は全て木製の古いタイプ。2台のハープも現代のグランドハープよりはだいぶ小型でした。
マーラーの時代のピリオド系演奏って、ノンビブラートだけどポルタメントはかけまくる感じかな、と聴く前は冗談半分に想像していたら、本当にそうだったので驚きました。弦楽器は今と見た目こそ同じですが、スチールではなくガット弦を張っているため柔らかく、ちょっと弱々しい感じの響きになります。当時の演奏スタイルの影響下にあると言われるワルター/ウィーンフィルの戦前の歴史的録音でもポルタメントが多用されていますが、それよりももっとズリズリと指を滑らせていて、今まで聴いたことがない新鮮さがありました。慣れるまではちょっと気持ち悪い。
シュタイネッカーは目つきの鋭いシュッとしたおじさんで、譜面台を置かず全て暗譜で指揮します。この曲を暗譜で指揮する人を他で見たことがありませんが、研究者だから隅々まで全て頭に入っている、ということでしょうか。いかにも感情を煽るような指揮ではなく、冷静にテンポや音量の指示を細かく出しているのですが、動作が激しく、結果的に熱量は伝わって来ます。オケのほうも、元々技量のある人たちだし、楽団としてのレパートリーが少ないから1曲に集中して取り組む時間はたぶん十分にあり、演奏は非常に手慣れていて傷がほとんどありません。マーラー演奏の鬼門である金管も、常に柔らかに音を出し、決して外さないのは立派です。よく聴くとコンサートマスター含めて個々の音色は艶やか、煌びやかという形容詞は決して付かない、ちょっとざらついた素朴な音でしたが、合奏になったときに突然見通しが良くなり、どの楽器がどういう音を出しているか、解像度よく聴き取れるようになります。これを「透明感」というなら、まさにそんな感じの演奏でした。ただしティンパニはちょっとドタバタしすぎていただけませんでした。
サクサク進むかと思いきや止まりそうなほどテンポが落ちたりというメリハリある第1楽章が静かに終わり、入念にチューニングし直してから始まった第2楽章は、アゴーギグたっぷりの田舎風ダンスを強調した演奏で、学究的とは言っても感情のないのっぺりとした演奏では全くなく、逆に今どき珍しい極端な箇所も多々あって、全体的にユニークさは予想以上。第3楽章もわざとらしい狂喜乱舞の揺さぶりはなくとも、元々のスコアがそのまま等身大に具現化されるだけでここまで激しい音楽になるということがよくわかりました。終楽章がその真骨頂で、聴きなれたアダージョも厚化粧を落とした後の透き通る響きが非常に新鮮でした。今までの自分の趣味だと、弦楽合奏が主役のこの楽章では重低音がオルガンのように響く演奏がカッコいいと思っていたので、ちょっと目が覚めた感がしました。最後はいっそう慎重に、コントラバスが消え、第1ヴァイオリンが消え、指示通り「死に絶えるように」音が下がっていく中、ひどいフライングの「ブラヴィ〜〜!」が最良の瞬間を見事にぶち壊してくれました。この阿呆を生涯出禁にして欲しいです。
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