Norwegian Wood (ノルウェイの森)2011/04/05 08:42

原作を読んだのはもう20年も前ですか。読んでみたのは単に世間で評判だったからですが、ご多分にもれず、たちまち村上春樹の世界にのめり込み、一時期村上作品を片っ端から読み込んでいた時期がありました。それ以前にハマっていた筒井康隆のハードSF作品や、ジョン・アーヴィングの長編小説(村上春樹の翻訳もありました)と同じ空気を感じたのも要因だったと思います。

前回「ノルウェイの森」を読み返したのもずいぶん前になるので相当忘れていますが、映画は原作のディティールと空気へのリスペクトを感じました。大胆な発想で再構築した脚本ではなく、原作を丁寧に刈り込み煮詰めて行ったので時間の流れに違和感がありませんでした。ただし、原作のノスタルジックな雰囲気はかなりスポイルされていましたが、これは外国(ベトナム)人監督だから仕方がないのかな。

役者選びとキャラクター作りは、読み込んだ小説の映画化にはどうしても辛口になってしまいます。村上小説は、やっぱり「やれやれ」がないとね。とは言え、原作の時代設定、原作の発表時、今回の映画化と、各々約20年の間隔がある中で、よくがんばった、とも思います。水原希子の緑だけは、あまりに痩せ過ぎの今風モデル体型でイメージ違いまくったけど。

違和感があったのは音楽。どこの現代音楽作曲家かと思ったら、Radioheadの人(Jonny Greenwood)なんですね。ポップスのジャンルに身を置いている人が作ったとは思えない、終始リゲティのような音楽でした。この音楽は映画が懐古的で甘ったるいムードに陥るのを徹底的に拒絶していますので、完全に監督の意図が入っているでしょう。そう言えば、こないだ見た「告白」にもRadioheadの曲が使われていて、今日本映画界では「旬」なんですかね。日本でそんなに人気が出そうなバンドじゃないように思うんですけど。

あとは、細野晴臣、高橋幸宏がちょい役で出てたのが嬉しかったですが(思わず坂本龍一も出ないかと注意して見ましたが、残念ながら彼は出演せず)、村上作品との接点はいったい何なのでしょう?

ロンドンでは3月11日から一般劇場公開が始まり、Curzon Soho、Odeon Covent Gardenなどでまだやってます。