ロンドンフィル/ヴェデルニコフ/石坂(vc):プロコフィエフの夕べ2012/01/13 23:59


2012.01.13 Royal Festival Hall (London)
Alexander Vedernikov / London Philharmonic Orchestra
Danjulo Ishizaka (Vc-2)
1. Prokofiev: Lieutenant Kijé Suite
2. Prokofiev: Cello Concerto in E minor, Op.58
3. Prokofiev: Symphony No. 7 in C sharp minor

調べてみたら、私はロンドンフィル、フィルハーモニア管、ロンドン響をちょうど1:2:3くらいの比率で聴いてるんですね。ということで、ロンドンフィルは聴きたい曲があるときだけチケット買ってます。このコンサートは、娘が以前LSOのファミリーコンサートに行った際に「キージェ中尉」をいたく気に入っていたのと(つくづく変わった子だ…)、石坂団十郎を一度聴いてみたかったので、勢いで買いました。

指揮者のヴェデルニコフは初めて聴きますが、ボリショイ劇場の音楽監督を長く勤めていたという経歴の何だか良くない面が前に出ている感じの人で、速めのテンポでさっさと進んで行くにしては音楽は一向に盛り上がらず、火力不足で煮え切らない演奏に終始していました。オケの反応もイマイチで、「キージェ中尉」の1曲目途中で急にテンポを上げてみたら早速振り落とされてしまい、こりゃいかんと指揮者が早々に「お仕事モード」に入ってしまったのは、鶏と玉子のどちらが先か、という世界ですね。ところでうちにあるこの曲のCDはバリトン独唱付きのオリジナルバージョンなので、それを聴き慣れているとオケ用編曲で低弦やサックスのソロが歌に取って代わるのは、やっぱり違和感があります。これは歌曲だったんやなあ、ということがひしひしと再認識されました。

2曲目のチェロ協奏曲は音源を持っておらず、全く初めて聴く曲でした。同時期に作曲していた「ロメオとジュリエット」のフレーズ流用がありましたが、それは些細なことで、全体的には難解な曲の部類でしょう。一回聴いたくらいではつかみ所がまるでわかりませんでした。純和風な名前ながらドイツ人ハーフの石坂団十郎は、黒ぶち眼鏡で前髪をきっちりと分け、レトロな雰囲気のハンサムボーイです。調子はちょっと悪かったのか、季節がら風邪をひいたかのようにかすれた高音が気になりました。多分上手いんだろうけど、曲がよくわからん曲だったこともあって、残念ながら心に残る「出会い」ではありませんでした。生真面目すぎるし、音に官能がありません。プロコフィエフよりも、次はバッハとかハイドンで聴いてみるべきかもと思いました。

メインの交響曲第7番も、実演で聴くのは初めて。副題の「青春」は青少年に向けて書いた曲という意味であって、涙も汗もレッツビギンもありません。「古典交響曲」ほど徹底はしてないにしても全編擬古典的で、最後はやっぱりここに戻ってくるのね、という微笑ましさを感じる楽しい曲です。こちらは途中「シンデレラ」っぽい箇所が出てきます。プロコフィエフもけっこう素材の使い回しをやってるんですね。ヴェデルニコフさん、最後までオケから火事場の馬鹿力を引き出すことは出来ず、いつものそれなりのLPOでした。燃料不足を象徴するかのように、2種類あるエンディングのうち、当然のように静かに終わるほうを選択していました。最後まで聴き通すと、このクールさ、ローカロリーさが実はこの人の持ち味だったのかと納得。私の好みには合いませんが。