ロイヤルオペラ:千両役者が揃った「トスカ」(最終日)2011/07/17 23:59

2011.07.17 Royal Opera House (London)
Antonio Pappano / Orchestra of the Royal Opera House
Jonathan Kent (Director), Duncan Macfarland (Revival Director)
Angela Gheorghiu (Tosca), Jonas Kaufmann (Cavaradossi)
Bryn Terfel (Baron Scarpia), Hubert Francis (Spoletta)
Lukas Jakobski (Angelotti), Jeremy White (Sacristan)
ZhengZhong Zhou (Sciarrone)
Royal Opera Chorus
1. Puccini: Tosca

今シーズン最後のロイヤルオペラは、ゲオルギュー、カウフマン、ターフェルと、看板スターを揃えた豪華版「トスカ」です。この人達が歌うのは14日と17日の2日しかなく、当然チケットは早々にソールドアウト。Friendでなかった私は一般発売日にバルコニーのボックスを辛うじてゲットできました。この「トスカ」はビデオ撮りをするので今度ばかりはゲオルギューもそうそうキャンセルはしまい、という予測があり、その通り、皆さん無事出てきてくれたのでまずは一安心。それにしても会場のいたるところにデカいテレビカメラが陣取って、周囲の観客にはさぞ邪魔だったことでしょう。




私が思うに、この日の出色は、まず何と言ってもパッパーノ大将。この人が振るとオケの集中力が違います。引き締まったアンサンブルに、パワフルでも外さない金管。あんたたち、やればできるんじゃん。もちろん全員ピシっと上着着用。この上なくダイナミックなパッパーノの棒振りに相まって、このドラマチックな音楽が活きてこその「トスカ」ですね。凄かったです。

ゲオルギューは昨年の「椿姫」でちょっとがっかりしたので、実は全く期待していなかったのですが(キャンセルするならそれも良し、とさえ思っていました)、透き通った美声がナチュラルによく通り、表現力も演技力も申し分なく、さすがオペラスターの十八番、と思わせる仕事でした。半分キャンセルした(ついでに日本公演も)昨年の「椿姫」と比べたら、気合が全然違ったような。小娘役はいざ知らず、女優トスカ役ならまだまだ余裕でイケる美貌も健在、第2幕ではボリューム満点のバストが眩しくて、ついオペラグラスを握る手に力が入りました。

カウフマンは初めてです。彼を見るためにチケット取ったようなものですが、テナーにあるまじき芯の太さでかつ伸びのある美声は期待を裏切りませんでした。この人も演技は達者です。押し一本だけでなく、引いて歌うこともできる、懐の深い歌唱でした。ターフェルも初めて聴きましたが、この人は逆にバリトンの域を超えてもっと脳天の上まで響くような軽さも兼ね備えた、個性的な声でした。悪役ぶりは全く堂に入ったものでしたが、スカルピアはもちろん悪い奴なんだけど、巨悪というよりは狡猾な策士で、その分、実は小心者でもあるという私の勝手なイメージからすると、ターフェルのあまりに堂々とした悪人ぶりがある意味カッコよすぎる気がしました。さらに、悪人顔とは言えよく見るとちょっと愛嬌もあり、むしろオックス男爵なんかハマるんじゃないかなー、と勝手に妄想。

今日は上からだったので、プロンプタの活躍もよく見えました。特に第3幕で主役二人の動きを事細かに誘導していました。カーテンコールの際、ゲオルギューはプロンプタへの投げキッスも忘れてませんでした。拍手の大きさは、強いて順位をつけると1番ターフェル、僅差の2、3番は同列でカウフマンとパッパーノ、少し間を置いて4番がゲオルギュー、という感じだったでしょうか。しかし総じてハイレベルのパフォーマンスであったのは疑いなく、千両役者が揃ったオペラの醍醐味をがっつり堪能させてもらいました。