聖チェチーリア音楽院管/ガッティ:至極真っ当なブルックナー9番 ― 2025/05/17 23:59
2025.05.17 Sala Santa Cecilia, Auditorium Parco della Musica Ennio Morricone (Roma)
Daniele Gatti / Orchestra e Coro dell’Accademia Nazionale di Santa Cecilia
Andrea Secchi (chorus master)
1. Brahms: Gesang der Parzen
2. Brahms: Schicksalslied
3. Bruckner: Symphony No. 9
私的「まだ見ぬ強豪」の一つ、聖チェチーリア音楽院管弦楽団は、バーンスタイン指揮でドビュッシー管弦楽曲集やプッチーニ「ラ・ボエーム」のレコーディングがあり、1990年代からガッティ、チョン・ミョンフン、パッパーノ、ハーディングといったスター指揮者が音楽監督に名を連ねるイタリアの名門オケです。ローマ出張中のオフ日にちょうど演奏会があったので、ここぞとばかり聴きに行きました。
映画音楽の巨匠モリコーニの名を冠したホールは北側郊外のちょっと不便な場所にあり、ローマ中心部からだとバスかトラムを乗り継いで行くことになります。大きい本屋を超えて奥に入ると、屋外円形劇場を取り囲むように3つの音楽ホールが階段上に位置し、どれがメインホールなのか外観だけでよくはわかりません。中には多目的のイベントスペースもあり、ジュニアオケと思しき団体がバーンスタインの「マンボ」を練習していました。
サンタ・チェチーリア・ホールの中は2800席と比較的広く、深い茶色で統一されたシックな内装に、なだらかな球面の天井がイタリアっぽいこだわりのオシャレです。プログラム前半は、ブラームスの「運命の女神の歌」と「運命の歌」という2曲の合唱曲。個人的にはどちらも全く初めて聴く曲ですが、プログラムにはそれぞれ過去の演奏歴が書いてあって、どちらも2010年にジョナサン・ノットの指揮で演奏して以来のようです。またガッティは「運命の歌」のほうを過去に3回も取り上げており、お気に入りなんでしょう。国立アカデミーの合唱団は80人くらい、声楽曲は元々苦手分野で細かいことはよくわからないものの、緻密なコントロールの下に人声の繊細さと迫力を感じることができました。ただし、ドイツ語の発音はちょっとイタリア寄りで、ブラームス臭いドイツっぽい匂いはしませんでした。なお、ガッティは過去2回聴いていますが、全て暗譜で臨むのがトレードマークのところ、今回も譜面台最初からなしの強気の攻めでした。
買った席がステージ真横だったのはまだよいとして、自席の周辺を見事にいかにも地元勢のおばちゃん時々おっちゃんに囲まれてしまい、開演前はべちゃくちゃ、演奏中でもひそひそとうるさいので、休憩の間に平土間の空いてそうな席に移動。やはり音的にはこっちが大正解でした。ちなみに本日は3日連続公演の最終日で、週末にも関わらず客入りはイマイチ。半分くらいしか埋まってなかったんじゃないでしょうか。もったいない限りです。
気を取り直してメインのブル9。オールイタリアンによるマカロニ・ブルックナーがどんな感じになるのか想像つかなかったのですが、ガッティもオケもさすがに世界の一流、ローカル色を封印した純度の高い正統派ブルックナーでした。まずこの人はブルックナーであろうともやっぱり暗譜で押し通しますが、前半以上に細かくタクトを操り、テンポを揺らし、非常にきめ細かく表情を付けていきます。自分の中でストーリーが完成されており、流れを大事にするためか楽章間をほぼ間髪入れず繋げます。そしてオケが優れて機能的で、応答が素晴らしく良く、何より音色が美しい。ご自慢の弦は言うまでもなく、金管も角がなく必要十分に鳴り渡り、オケが一体となって極めてナチュラルに、なめらかな盛り上がりを見せます。このようなひたすら美しい系のブルックナーが果たして王道かというと、異論もいろいろあるでしょうが、ヨーロッパの一流オケの誠実な仕事ぶりにいたく感動しました。それにしてもガッティの仕事人ぶりは相変わらずのハイレベルで、この人はとんでもなく優れたオケマイスターなのかもしれません。なお、オケメンバーは基本ヨーロッパ系の人ばかりで、第1ヴァイオリンに日本人らしき女性が一人いたのですが、プログラムを見ると韓国系の人でした。
おまけ。イタリアでも人気のようです。
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