日本フィル/タカーチ=ナジ:巨匠の生真面目なハーリ・ヤーノシュ ― 2025/05/31 23:59
2025.05.31 みなとみらいホール (横浜)
Gábor Takács-Nagy / 日本フィルハーモニー交響楽団
三浦謙司 (piano-2)
安達真理 (viola-3) ※客演首席奏者
1. シューベルト: 交響曲第7番《未完成》 ロ短調 D759
2. モーツァルト: ピアノ協奏曲第21番 ハ長調 K.467
3. コダーイ: 組曲《ハーリ・ヤーノシュ》 op.15
ハンガリーの巨匠タカーチ=ナジ・ガーボルさんが来るとあって、しかも曲は「ハーリ・ヤーノシュ」、躊躇なく横浜まで馳せ参じました。
1曲目の「未完成」。まず驚いたのが、譜面台上のスコアをオペラグラスで覗くと、赤青黄の蛍光ペンでびっしりとマーキングしてあり、ところどころに付箋まで付いてました。指揮者の生真面目さが伺えます。そこまで分析し尽くしているだけあって、冒頭からおっと思わせる繊細な出だしにまず引き込まれます。元々ヴァイオリンの名手だけあって、弦のコントロールが実にスムース。ボウイング含めたアンサンブル、ニュアンス、バランス、どれを取ってもしっかりと指示を根付かせているのが凄い。管楽器もクリアにくっきりと響かせ、指揮ぶりはリズムをしっかりとキープしつつ細かい指示を出しまくる、まさに職人気質の堅実な指揮者でした。派手さやクセの強さはないものの、安定したクオリティを客演でもしっかりと導き出せる安心感は、世界中で好まれることでしょう。と言いながらもこの曲が超苦手な私は、後半はいつものごとく意識を失ってました…。
2曲目のモーツァルトのピアノ協奏曲、ソリストは三浦謙司という初めて聞く人。ロン・ティボー国際コンクールの2019年ピアノ部門優勝者という受賞歴を持つ、まだ30代前半の若者です。余談ですがこのロン・ティボー国際コンクールは、近年は財政難で開催自体がスポンサー次第という不安定な状況のようですが、古くはサンソン・フランソワ、アルド・チッコリーニ、フィリップ・アントルモン、パスカル・ロジェなどの巨匠を輩出し、スタニスラフ・ブーニンもショパンコンクール優勝の前にこのコンクールを当時の最年少で優勝しています。とはいえ、三浦氏のピアノはそういったフレンチテイストの巨匠タイプとは異なり、遊びの少ない生真面目タイプに映りましたが、もちろん、不得意のモーツァルトでもあり、この1曲だけでは何ともわかりません。ただ、同タイプの職人ガーボルさんとの組み合わせは非常にやりやすかったのではないかと思います。アンコールはシューマンの「3つのロマンス」第2番をしっとりと。
さて、ガーボルさんの指揮を今まで聴いたのは、ブダペスト祝祭管を含めてどれも比較的小編成の古典曲ばかりだったので、元々がタカーチ・カルテットで名を馳せた人ということもあり、音楽がミクロの方向に向かっていく傾向にあるのかなと感じていました。ここで一気に大編成になる「ハーリ・ヤーノシュ」はどう攻めるのだろうと思っていたら、やっぱりとことん細かく刻み込む演奏でした。相変わらず蛍光ペンでびっしりと書き込まれたスコアを手に、速めのテンポであまり粘らずにグイグイと進んで行きます。一昨年聴いたマダラシュ/N響がおおらかなスケール感を出していたのとは対照的。オケは金管中心にキズが多く、曲を楽しむよりも必死な感じが奏者それぞれの顔に出ています。ここらへんはN響と地力の差が見えたでしょうか。ツィンバロン、サックス、ヴィオラといったゲストは、飲まれることなくプロの仕事をこなし、しっかりと要所を締めていました。ツィンバロンの斉藤浩さんは一昨年のマダラシュ/N響でも素晴らしい演奏を披露されており、今の大河ドラマ「べらぼう」のテーマ曲にもソロで参加されている、日本ツィンバロン界(というものがあるのかどうか)の第一人者ですね。
終曲はオケも気合みなぎって大いに盛り上がり、ガーボルさん思わずガッツポーズ。アンコールではメモを持って登場、日本語で紹介した曲は「ルーマニア民族舞曲」。思えば今回の来日プログラムにバルトークがなかったので、思いがけないラッキープレゼントでした。
by Miklos [日本フィルハーモニー] [バルトーク] [ハンガリー] [コメント(0)|トラックバック(0)]
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