ロンドン響/ゲルギエフ/マツエフ(p)/カヴァコス(vn):ブラームスとシマノフスキ2012/12/19 23:59


2012.12.19 Barbican Hall (London)
Valery Gergiev / London Symphony Orchestra
Denis Matsuev (piano-1), Leonidas Kavakos (violin-2)
1. Szymanowski: Symphony No. 4 ('Symphonie Concertante')
2. Szymanowski: Violin Concerto No. 2
3. Brahms: Symphony No. 4

このところLSOはシーズン毎に2人ずつくらいピックアップコンポーザーを設定しておりまして、2010/11はマーラーとシチェドリン、2011/12はチャイコフスキーとストラヴィンスキーが取り上げられていました。2012/13のシーズンはブラームスとシマノフスキという渋い取り合わせですが、あまりに渋過ぎて何となく気分が乗らず、私が聴く予定なのはこの演奏会だけです。今日はMEZZOというフランスのクラシック専門チャンネルで中継があるとのことで、多数のテレビカメラが入っており、照明を落としていたわけでもないのに譜面台にはいちいちライトが取り付けてあって、舞台上の配線がたいへんなことになっていました。

1曲目は実質ピアノ協奏曲ですので、今日はコンチェルトが2曲にシンフォニーという豪華プログラム。シマノフスキの交響曲第4番は昨年王立音楽大学のアマチュアオケで聴いて以来です。マツーエフは2年ぶり。鋭く差し込むようなインパクトの運指に派手なオーバーアクションは健在で、見ていて楽しいビジュアル系です(見た目は「太めのウィル・フェレル」ですが)。どちらかというと幻想的、叙情的なこの曲を、これだけガンガンバシバシと切り込んでいくのはかなり個性的な解釈だと思います。まあ、こういうのもアリでしょうか。テクニカルな凄さは、もう何も言うことありませんし。ゲルギーはいつもの爪楊枝指揮。今日はテレビが入っているからなのか、髭なんか奇麗に剃っちゃって、トレードマークの不潔な雰囲気が薄められ、何だかよそ行きの顔です。

次のヴァイオリン協奏曲は、同じカヴァコスのソロにロンドンフィルのバックで、ほぼ2年前に聴いたっきりです。もう見慣れてしまった宅八郎系風貌のカヴァコスは、やっぱり上手い。この人もどちらかというとテクニックでガンガン押すタイプと思いますが、ハヤビキではないものの重音を多用したいかにも難しそうなカデンツァをいとも自然にクリア。硬軟どちらもイケる懐の深さを見せつけられ、参るしかありませんでした。今日のソリストはどちらも我の強い系で、ひたすらプッシュする演奏スタイルは両者ともアッパレです。それにしてもシマノフスキという作曲家、名前は地味ですが作風はむしろ多彩で派手、なかなか深い世界があります。売りようによってはもっとメジャーになってもよいのかも、と思いつつ。

メインのブラ4。ブラジャー4枚ではありません(という「名曲探偵アマデウス」ネタは分かってくれる人がいるのか?)。この曲は、ええと、ちょうど3年前に同じバービカンでコンセルトヘボウの演奏を聴いて以来なので、比較的好きな曲にしてはずいぶん間が開いてしまいましたね。ずずずっと引きずるような出だしからして個性の強いゲルギーの棒(ならぬ爪楊枝)で導かれるのは、決してさらさらとは流れず終始ぎこちない不器用な演奏。もちろんこれは確信犯ですが、存在感が心に残る演奏でした。確かに、ブラームスはスタイリッシュに決めればよい音楽ではないにしても、ありふれた演奏なんかやってやるもんかという気概をひしひしと感じました。


ブレ御免。髭を剃ってさっぱりしたゲルギエフ。


おまけのサービスショット、チェロのミナ嬢。この人はやっぱり、LSOの中だとダントツの美人ですね。正面写真のチャンスもしつこくうかがったのですが、成功せず…。