ブリテン・シンフォニエッタ/エルダー卿:比類なき美しさ「キリストの幼時」2011/12/08 23:59

2011.12.08 Queen Elizabeth Hall (London)
Sir Mark Elder / Britten Sinfonia
Sarah Connolly (Ms), Allan Clayton (T)
Roderick Williams (Br), Neal Davies (Bs)
Britten Sinfonia Voices
1. Berlioz: L'enfance du Christ, Op.25

初めて聴くブリテン・シンフォニエッタは、BritainではなくBrittenです。つまり作曲家ブリテンの名を冠したアンサンブルで、本拠地はケンブリッジだそうです。シーズンプログラムをざっと見るとバロック、古典から現代まで幅広いレパートリーを持っていますが、やはりブリテン周辺の20世紀の音楽を得意としている様子。

ベルリオーズを特に好んで聴く人でもない私が(嫌いというわけではないのですが、結局「幻想交響曲」以外、よく知らないのです)何故この「キリストの幼時」という苦手ジャンルの声楽曲を聴きに行ったかと言うと、終盤に出てくる有名な「2本のフルートとハープの3重奏」には訳あってノスタルジーがあり、一度実演で聴いてみたいと思っていたところ、たまたまこの演奏会を見つけたのでした。生で聴く機会はなかなかない曲と思っていたのですが、イギリスだとそうでもないみたいですね。今日はフェスティヴァル・ホールのほうではアシュケナージ/フィルハーモニア管がほかでもない幻想交響曲を演奏していたのでそちらもたくさん人がいたのですが、渋いプログラムのこちらもほぼ満員。ただし客層は見事にシニア一色でした。

この曲を通しで聴くのはほとんど初めてのようなものです。ベルリオーズが自分の名を伏せ、17世紀に作曲された宮廷礼拝堂のオラトリオの断片として紹介した「悪戯」が、この作品の誕生したきっかけですので、全編ベルリオーズらしからぬ古雅で敬虔な雰囲気で統一され、確かに、予備知識がなければ私もバロック時代の作品と信じたでしょう。ということで、「ベツレヘムの嬰児虐殺」をテーマに含んでいるわりにはやけに落ち着いて、派手な音響、えげつない表現は一切ない心地良いヒーリング音楽に、第一部はすっかり夢の彼方。

休憩で気を取り直して第二部。最初に作曲され、出所を偽って発表されたのはこの部分ですが、何という美しい旋律とハーモニー。誰の作曲であろうと、この比類ない美しさは賞賛されたと思います。ブリテン・シンフォニエッタの弦とコーラスが、これまた非常に澄み切った極上サウンドなので驚きました。第三部の「2本のフルートとハープの3重奏」も人智を超えた天上の響き。開演が15分も遅れたので規律の弱いオケだなと最初は悪印象だったのですが、完璧なアンサンブルにすっかり感心してしまいました。この透明感は、まさにピリオド系の古楽器集団のものです。ピリオド専門じゃない楽団がここまでの音を作れるとは、ブリテン・シンフォニエッタ、侮れじ。独唱も粒ぞろいで穴がなく、ホールが広すぎない分よく声が通って、素晴らしい出来でした。ただ、演出にはちょっと難ありです。上手下手の端に独唱者を分けて配置し、歌う場面になると指揮者の近くまでそろりと歩いてくるのですが、この美しく静かな音楽に足音は全く邪魔でした。最後など、コーラスが消え入るように歌っている最中に独唱者を歩かせたりするのはいかがなもんかと。単純に、指揮者の左右に座って出番が来たら立つのではなぜいけなかったのか。また、ハープは第2ヴァイオリンの後ろに置かれていてフルートと相当距離があり、どうするんだろうと思っていたら、3重奏のときにフルートが端まで移動してきて、ついでに指揮者まで移動してきて丁寧に3重奏を指揮していました。舞台上フルートの横あたりはスペースがあったので、なぜ最初からそこにハープを置かないのか。理解できないことだらけでした。

この曲、来週木曜日までBBC Radio 3のオンラインで放送してますが、演奏はこれではなく、ウェールズのBBCナショナル管のカーディフでのライブです。うーん、残念。