フェドセーエフ/N響:まずはご健在に祝福、ボロ2とチャイ42017/05/19 23:59

2017.05.19 NHKホール (東京)
Vladimir Fedoseyev / NHK交響楽団
グリンカ: 幻想曲「カマリンスカヤ」
ボロディン: 交響曲第2番ロ短調
チャイコフスキー: 交響曲第4番ヘ短調

フェドセーエフは新婚旅行の際、ウィーンで聴いて以来です。ここ数年何度かN響に客演していたのは知っていましたが、タイミングが合わず、もういいお歳なので下手すりゃ再見できずじまいかと諦めかけておりました。悠々と登場したフェドさんは、風貌が昔とあまり変わっておらず、よぼよぼしたところも皆無だったので、とても85歳には見えず、お元気そうで何よりでした。

1曲目は初めて聴く曲ですが、そもそもグリンカというと「ルスランとリュドミラ」序曲以外の作品を知りません。しかしこれが意外と小洒落た佳曲で、短い中にもロシアの情景が穏やかに詰まっています。中間部の軽妙なクラリネットソロがたいへん上手かったです。

続くボロディンの2番は、そこそこメジャーな交響曲の名曲で、レコーディングも多数ありますが、欧州在住時代でも演奏会のプログラムに乗ったのをあまり見たことがなく、生で聴くのは初めて。「だったん人の踊り」くらいは昔どこかで聴いたと思いますが、ボロディン自体、今までなかなか演奏会で聴く機会がなかったような。さて第2番ですが、第1楽章の勇者の主題はたっぷりと重厚に聴かせ、どっしりと行くのかと思いきや、楽章を追うごとに重しが取れて、終楽章などは実にあっさりこじんまりと軽くまとめていて、ある意味小細工なく、アンバランスさも含めてあるがままの曲の姿を浮き彫りにしたと言えそう。金管の音が汚いのがちょっと興ざめです。いちいちアタックが強いのはロシア風なのか・・・。

メインのチャイ4も何だか同じ芸風で、第1楽章はリズムが死んでいて、第2楽章もスローテンポで弦を重厚に響かせ、とにかく前半が重い。切れ目なく開始した第3楽章は、極めて抑制の効いたピッツィカートがそれまでの重さを払拭してくれました。元々合間をあまり置かないフェドさんなので、終楽章もアタッカで行くのかと思いきや、ここは弦楽器が弓を持ち変えるために一息いれたのがちょっと意外。しかし、第2主題の前は一瞬パウゼを入れる演奏が多い中、スコアに忠実なフェドさんはそんなもの一切入れず、おかげで第2主題の頭が聴こえないという、曲の問題点をやはりそのまま浮き上がらせてしまいます。音が雑だなあと感じてしまうと、そんな細かいことばかりが気になってしかたがない。まあしかし、こんなオハコ中のオハコであろう曲でも常にスコアを追いながらデリケートな音楽作りをするのがフェドさんの真骨頂なれど、理想の「音色」まで引き出すような指導はしないのだなあ、ということがわかりました。チャイ4に関しては、昨年聴いたチョン・ミョンフンのほうが指導力に勝るかなと思いました。