ロジェストヴェンスキー/読響:なぜか不機嫌なショスタコ三昧2016/09/26 23:59

2016.09.26 サントリーホール (東京)
Gennady Rozhdestvensky / 読売日本交響楽団
Viktoria Postnikova (piano-2)
1. ショスタコーヴィチ: バレエ組曲「黄金時代」
2. ショスタコーヴィチ: ピアノ協奏曲第1番ハ短調
3. ショスタコーヴィチ: 交響曲第10番ホ短調

たいへん失礼ながらまだご存命とは思っていなかったロジェベン翁、生を聴ける機会があるとは感動です。同じ旧ソ連のフェドセーエフとほぼ同年齢ながら、フェドさんのデビューがだいぶ遅咲きだったから、フェド=新進気鋭、ロジェベン=大御所という印象がずっと抜けてませんでした。

敬老の9月にゆっくり登場したロジェベンは、笑顔のかわいい好々爺。よく見ると、長身というわけでもないのに指揮台がなく、やたらと長い指揮棒が特徴的。生演は初めて聴きますが、登壇時のヨタヨタがフェイクかと思えるくらい、85歳らしからぬ切れ味鋭い凄演にのっけから驚き、確かにこの人は爆演系で有名な人だったのを思い出しました。「黄金時代」は、私の記憶の中で鳴り響いていたのが思い違いの別曲で、初めて聴く曲だったので、細かい部分はよくわかりませんが、一人だけ異色な雰囲気を発散していたオールバックの男前サックスの奏でる、クラシックらしからぬ遊び人っぽいソロがたいへん印象的でした。

2曲目のコンチェルトのソリストは、長年連れ添っている奥さんのポストニコワ。すいません、全く初めて聞く名前だったので予備知識ゼロですが、いかにもロシアのお母さんという感じの風貌とは裏腹に、年齢を感じさせない、肩の力が抜けた屈託ない無邪気さがこれまた意外。軽妙なソロトランペットもソツなくピアノを盛り立て、ご満悦のロシア母さんでした。

軽い感じの選曲だった前半とは打って変わり、メインはほぼ11年ぶりに聴くタコ10。ハープ、チェレスタ、ピアノ等の飛び道具弦楽器を使わないオーソドックスな3管編成は、それだけで格調高く重々しい雰囲気を醸し出してますが、さらにロジェベン翁は長大な第1楽章の冗長さを隠そうともしない直球勝負で、荒廃した荒野が広がります。読響金管は、ロシアのオケっぽくアタックの強い直線音圧系でよくがんばっておりました。全体の中では比較的軽い第2楽章も重厚に鳴らし、事故かもしれませんが、終了直後に指揮棒でスコアをピシャッと一発叩いたため、奏者と聴衆に一瞬緊張が広がりました。全体を通して演奏中は何故だか不機嫌そうに見え、楽章間の雑音を嫌うようなそぶりも見せていました。

第3楽章も、まあ長いこと。結論よりもプロセスを重視する進め方は、後から思うとメリハリがよくつかめず、見通しにくい演奏だったのかなと。大御所の棒の下、読響にしては驚異的によく鳴っており、一体感のある好演奏だったと思います。終楽章の終演直後、スコアをバサッと乱暴に閉じて不機嫌を隠そうともしないロジェベン翁は、一旦引っ込んだ後にはもうキュートな笑顔のおじいちゃんに戻っていました。しかし良い演奏だったのに、何が気に食わなかったのだろう…。