日フィル/山田和樹:「火の鳥」「不滅」の超重量級プロ2014/04/25 23:59

2014.04.25 サントリーホール (東京)
山田和樹 / 日本フィルハーモニー交響楽団
1. ストラヴィンスキー: バレエ音楽《火の鳥》
2. ニールセン: 交響曲第4番《不滅》

日フィルに行くのは10数年ぶりで超久々、山田和樹は3年前のBBC響以来です。楽章切れ目なしのビッグピースを2つ並べた超重量級プログラムは、まさに私好み。

前に聴いた時、山田和樹は細部にこだわるよりも全体の流れを上手く形作ってわかりやすく見せることができる、往年の巨匠の芸風を持った人、という感想でしたが、今日の「火の鳥」ではちょっとそれが裏目というか、オケの限界と曲自体の冗長さが際立ってしまってました。おそらく組曲版であれば上手くハマるのでしょうが、一幕のバレエ音楽では流れをそう単純化はできず、結果途中間延びしてしまう箇所がいくつかありました。こういうときにギャップを埋めてくれる管楽器の個人技があればなあ、と感じるのは無いものねだりでしょうか。一方、クライマックスである魔王カスチェイの踊りでは、小径で深胴の大太鼓を力任せにぶっ叩く暴れっぷりが実に壮快。この快感はライブじゃないと味わえません。なお、トランペットを2階席に配置するなど、何かしらの音響効果を狙った仕掛けがなされていましたが、音量・音圧を補う役目でもなかったので、これは効果のほどがよくわからなかったです。

メインの「不滅」は、比較的ゆったり目のテンポで開始。「火の鳥」では時々引っかかったリズムのキレの悪さも(多分オケが引きずってますが)、この曲ではそんなに気にならず、おおらかでシンフォニックな展開は、まさに往年の巨匠風です。いろいろ聴いていると、こういうのは実はニールセン演奏としては邪道なんだろうなと感じてきますが、きっかけはバーンスタインで中学のときこの曲にハマった私としては、山田和樹の演奏は心にたいへんしっくりと染み入ります。本日最大の目玉である終結部のティンパニのかけ合いは、先ほどの大太鼓に負けじと渾身の力で叩き込み、期待を裏切らぬド派手な応酬で、たいへん満足しました。やっぱりこの曲は実演で聴くに限りますね。ただしスコアの指示では2組のティンパニをステージの両端に置かなければならないのに、第1が舞台奥中央、第2は向かって右奥という中途半端な配置が残念でした。一方、一つ感心したのは、ティンパニの並び方が一方はドイツ式(右手が低音)、他方はアメリカ式(左手が低音)だったこと。これは二人の奏者が各々たまたまそういう習慣だっただけなのかもしれませんが、対向配置という意味では非常に理にかなっており、目から鱗でした。

終演後は奏者のところまで行って一人一人立たせるのは、ロンドンで見たときと同じ。ヨーロッパ在住で、スイス・ロマンドの首席客演指揮者でありながら、日本で数多くのアマオケも引き受けているようで、飛び回り過ぎなのがちょっと心配です。せっかく欧州に足がかりができてきたのなら、佐渡裕みたいに無理矢理でもどっしりと腰を下ろして活動すればよいのに、と思ってしまいますが、外野が憶測するよりもずっと厳しい世界なんでしょうね。