LSO/ティルソン・トーマス/ヨーヨー・マ(vc):コープランドとタコとブリテンと2013/06/09 23:59


2013.06.09 Barbican Hall (London)
Michael Tilson Thomas / London Symphony Orchestra
Yo-Yo Ma (cello-2)
1. Copland: Orchestra Variations
2. Shostakovich: Cello Concerto No. 1
3. Copland: Short Symphony (Symphony No. 2)
4. Britten: The Young Person's Guide to the Orchestra

ヨーヨー・マがLSOに登場するのは多分久しぶりだと思います。日本でも人気者のヨーヨー・マですから、今日はやたらと日本人の姿が目につきました(もちろん中国人も)。そこかしこで「3つとも行かれますの?」という会話を耳にしたので、ティルソン・トーマス(MTT)が指揮するこの3公演、日本人的には3つで特別なワンセットだったみたいです。私的には、LSOのシーズン終盤の一コマに過ぎないんですが…。しかしこのミニシリーズ、MTTですからもちろんテーマはあり、今回はコープランド・ショスタコーヴィチ・ブリテンという、同世代の人々ながらも一見よくわからん食い合わせ。プログラムを読むと、この3人はLSOと所縁が深く、MTTとも面識がある、というパーソナルな理由が全てみたいです。

まずはコープランド。「ロデオ」を昔演奏したことがありますが、それ以外は「アパラチアの春」と「エル・サロン・メヒコ」といった定番しか知らなくて、日本やイギリスでは演奏会のプログラムに乗ることも少なく、正直、未知の作曲家です。最初の「変奏曲」は怪獣映画のバックミュージックのように、重くて派手な曲。もう一つの「ショート・シンフォニー」は、グッとフォーマルな雰囲気の硬派な純粋音楽。どちらももちろん初めて聴く曲で、普段イメージする「アメリカ民謡を多用する国民的作曲家」とは一線を画した、お固いシンフォニストとしての側面を見ました。

ショスタコのチェロコン第2番は何度か聴いていますが、第1番は初めてでした。弦楽、木管、ホルン1本、ティンパニ、チェレスタという変な編成で、ホルンは準ソリストのような重要な役割です。どう聴いてもショスタコなマンネリズムに溢れた行進曲風の第1楽章から、ヨーヨー・マは、よくぞこの曲で、と思うほどしっかり没入型のよく歌う系チェロ。第2楽章まではその調子で、ホルンの素晴らしいソロと相まって良い感じだったのですが、後半はまず曲が尻すぼみで退屈したのと、チェロも集中力が切れてどうにも音が定まらないように見えました。ヨーヨー・マというビッグネームでなければ、あまり上手くないチェリストやなあ、と思ってしまったかも。これは後の演奏会でリベンジに期待です。


指揮者そっちのけで楽団員を讃えるヨーヨー・マ。

最後のブリテン「青少年のための管弦楽入門」は、演奏会のプログラムにこの曲を見つければ即チケットを買ってるくらい大好きな曲なのですが、実演で聴ける機会は実際にはそう多くありません(一昨年のBBCプロムス・ラストナイトで演奏され、大いに盛り上がっていたようですが、残念ながらラストナイトはそうそう行けません)。名手揃いのLSOだけあって、まさにガラ・コンサートを見ているような感覚で、奏者の妙技をただただ堪能しました。この曲を、このクラスのオーケストラで聴けたという感動は、後半のフーガ終盤でパーセルの主題が戻ってくる箇所で頂点に達し、涙腺にじわっと込み上げるものがありました。

振り返ると、選曲もせいもあるでしょうが、MTTのカラーはどこに出ていたか、よくわからなかったです。黒子のような働きでした。なお本日は、LSOとしては珍しく、クラリネットに日本人奏者の姿が。近藤千花子さんという人で、調べると東京交響楽団所属、現在はRAM(王立音楽院)に留学中だそうです。


笑顔のティルソン・トーマス。


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