LSO/ハイティンク/ピレシュ(p):極東ツアー前哨戦第二弾2013/02/17 23:59

2013.02.17 Barbican Hall (London)
Bernard Haitink / London Symphony Orchestra
Maria João Pires (piano-1)
1. Beethoven: Piano Concerto No. 2
2. Bruckner: Symphony No. 9

12日に引き続き、LSO極東(韓国・日本)ツアーの前哨戦です。この日は図らずもダブルヘッダーになってしまい、午後サウスバンクでラベック姉妹を聴いた後、その足でバービカンに移動。地下鉄が止まっていたので車で行ったら、意外と近かったんですねえ。

当初の発表ではモーツァルトのピアノ協奏曲のうち21番がベートーヴェン7番と、17番がブルックナー9番とペアリングされていましたが、昨年8月の段階で、ソリストの意向により21番が外され、代わりにベートーヴェンの協奏曲第2番が入ってきてブルックナー9番とカップリング、17番はスライドでベートーヴェン7番と組むということになりました。21番はもちろん得意レパートリーのはずなので不可解な変更ですが、もしかしたらこれからベートーヴェンの協奏曲全集をレコーディングする予定で、その予行練習をしたかったのかもしれません。このケースではどのみち私はピレシュのピアノが聴ければ何でもよいので、バルトークでもやってくれるならともかく、曲目変更はどうでもよかったりします。

ベートーヴェンのコンチェルト2番はほとんど初めて聴く曲です。クラリネット、トランペット、ティンパニを欠く編成の、ベートーヴェンらしからぬ可愛らしい曲で、自作を宮廷で貴族相手に披露していた名残のような雅な雰囲気を感じます。今回ピレシュをほぼかぶりつきで見たのですが、けっこう高いかかとの靴でゴンゴンと床を叩いてリズムを取りつつ、時折大きな深呼吸もしつつ、一糸乱れぬ完全主義的な演奏にいたく感動しました。ぎくしゃくしたり、ヘンな仕掛けをしたりということは一切なく、音楽がそのままの姿で正直に流れていきます。ハッタリやこけ脅しとは全く無縁の世界で、模範演奏とはまさにこういうことを指すのだなあと感心。ハイティンクのスタイルとも共鳴する部分は多く、相性抜群の取り合わせを生で聴ける幸せをしみじみ感じました。


メインのブルックナー9番は、「ブル嫌い」の私にしては珍しく何度も聴いている曲ですが、前回聴いたのはちょうど2年前、同じくLSOをラトルが振ったときでした。先日のベートーヴェンのときにはなかった椅子が今日は指揮台に置いてありましたが、ハイティンクは楽章間の小休憩のときに少し座っただけで、基本はぴしっと背筋を伸ばした直立不動。健康に不安はなさそうです。音楽のほうは、壮大な建造物を思わせる、スケールの大きいブルックナー。ラトルのときはいろいろと仕掛けるあまり途中オケが振り落とされたりもしていましたが、ハイティンクはさすがにこの曲はオハコ中のオハコ、小細工抜きの全く危なげない展開。安心して聴いていられる、保守本流とはまさにこのこと。オケも最上級の真剣モードで、重厚な弦、迫力の金管、精緻の木管と、どれを取ってもLSOの「今」を余すところなく披露していました。ティンパニは最近暴走気味のプリンシパルのトーマスではなくベデウィでしたが、逆に手堅い演奏で良かったです。

来月の訪日公演のプログラムで、トップオケのパワーに酔いたいならブルックナー9番、重いのはちょっと…という人ならより聴きやすいベートーヴェン7番がオススメです。ごまかしのない高品質は、どちらを取ってもハズレはないでしょう。メンバーが前日六本木で飲み過ぎてヨレヨレにならない限りは…。一回あったんです、ブダペストでヨレヨレのLSOを聴いたことが…。

おまけ。チェロのミナさんです。大概ヴァイオリンの陰になってしまい、なかなかよいショットが撮れません…。




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