フィルハーモニア管/サロネン:スタイリッシュ系、マーラー「復活」2012/06/28 23:59


2012.06.28 Royal Festival Hall (London)
Esa-Pekka Salonen / The Philharmonia Orchestra
Kate Royal (S-2), Monica Groop (Ms-2)
Philharmonia Chorus
1. Joseph Phibbs: Rivers to the sea (London premiere)
2. Mahler: Symphony No. 2 (Resurrection)

個人的には今シーズン最後のフィルハーモニア管、最後のロイヤル・フェスティヴァル・ホールです。チケットの束をチェックしたら、フィルハーモニア管は何と今年一杯はもう聴きに行く予定がない!フィオナちゃん、ケイティちゃんも当分ご無沙汰です、しくしく。ところで、ロンドンでマーラーの「復活」を聴くのはこれで3回目ですが、指揮者は違えどオケは全てフィルハーモニア管というのが面白い。3シーズン連続で取り上げているということでもありますね。昨年4月のマゼールのマーラーシリーズで聴いた「復活」で、初めてフィオナちゃんを認識したのでしたっけ。月日の経つのは早いものです。


おさらいに余念のないフィオナちゃん。今日は三番手でした。


こちらはクールな余裕のプリンシパル、ケイティちゃん。

1曲目はフィブスの新曲で、先週のアンヴィルでの「世界初演」に続き、今日は「ロンドン初演」です。ゆったりと流れる川そのものの、穏やかなトーンの写実的音楽で、前衛的なところはみじんもなく、ドキュメンタリー映画のBGMとしてそのまま使えそうです。一度聴いたくらいでは引っかかりがなく、さらーと身体を通り過ぎる感じで、あれ、今のは何だったかなと。あまり心に残りませんでした。

さてメインの「復活」。サロネンのマーラーを聴くのはCDも含めて実は初めて。マーラー指揮者というイメージも正直なかったのですが、Wikipediaを読むと、サロネンの指揮者としてのキャリアはマーラーから始まっているんですね。今日の演奏の印象を一言で言うと「スタイリッシュな"復活"」。最初快活なインテンポでサクサク飛ばしたかと思えば、遅いところでは止まりそうなくらいにまでテンポを落とし、またダイナミックレンジもかなり広く取って、メリハリの利いた演奏でした。ある意味極端なことをやってるのですが、どろどろとした情念や汗臭さはなく、あくまで理知的でスマートです。時々ありがちな突貫工事の匂いはなく、多忙なサロネンにしてはいつになく丁寧に積み上げられているなあと感じました。オケはしっかりとサロネンに着いて行き、コケてしまった箇所も無いではありませんでしたが、総じて演奏の完成度は高く、木管、特にコールアングレの素晴らしい音色や、骨太だが角が取れているホルンなど、管楽器の妙技が光っていた演奏でした。コンマスのヴァイオリンソロだけはちょっと虚弱でしたが…。あと、スミスさんのティンパニは、相変わらずカッコいいんだけど、前の時も思ったけどチューニングがやっぱり変です。

メゾソプラノは当初エカテリーナ・グバノヴァが出演の予定が、スケジュールのコンフリクトのため(要はダブルブッキングということ?)降板、代役のモニカ・グループはメゾというよりはアルトの声で、急で時間がなかったということでもないのでしょうが、だいぶ安定度に欠ける歌唱でした。ソプラノのケイト・ロイヤルも声質は低めでメゾソプラノ向きにも思いますが、こちらはそつなく手堅い歌唱。ロイヤルはレコード会社の宣伝文句によれば「日本人好みの正統派癒し系シンガー」とのことですが、私の印象は全く違って、長身で見た目筋肉質の体格は「癒し系」どころかスポーツ選手のようです。

それにしてもサロネンさん、今日はいつもにも増してオケを鳴らす鳴らす。まるで一昨日のシモン・ボリバル響を聴いて対抗心を燃やしたかのような鳴らしっぷりでした。男女同数の低音を利かせた厚みのあるコーラスの健闘もあって、クライマックスの音量では実際負けてなかったと思います。マゼールのように最後は自然体にまかせるのではなく、最後まで力技を使ってピークに持って行くよう焚き付ける、そんな感じの「復活」でした。ロンドンでの最後の定期演奏会にふさわしく、音の洪水の大盤振る舞いに、聴衆の拍手喝采も相当なものでした。

一昨日に続き、連続して「音響浴」に身をあずけることになりましたが、今日は正直、プロフェッショナルの演奏にちょっとホッとした自分がいます。やっぱりシモン・ボリバルの圧倒的な「スタジアム系」には、楽しんだと同時に違和感を覚えていたということですか…。