フィルハーモニア管/マゼール:マーラー5番、角笛歌曲集2011/05/05 23:59

2011.05.05 Royal Festival Hall (London)
Lorin Maazel / The Philharmonia Orchestra
Sarah Connolly (Ms-1), Matthias Goerne (Br-1)
1. Mahler: 6 songs from "Des Knaben Wunderhorn"
2. Mahler: Symphony No. 5

「マゼールのマーラー・チクルスを厳選して聴きに行く」シリーズ第5弾。最初は歌曲集「子供の不思議な角笛」から以下の6曲の抜粋です。

 1. Wo die schönen Trompeten blasen(トランペットが美しく鳴り響くところ)
 2. Rheinlegendchen(ラインの伝説)
 3. Das irdische Leben(この世の営み)
 4. Urlicht(原光)
 5. Revelge(死せる鼓手)
 6. Der Tamboursg'sell(少年鼓手)

前半3曲をコノリー、後半3曲をゲルネという歌いわけでした。二人ともこのマゼールシリーズでは初登場です。

コノリーは一昨年のプロムス・ラストナイトで見て以来です。美形というよりは個性的で、ある種男性的でもある顔立ちですが、佇まいに気品があって、無駄に顔を振ったり手を広げたりしないのがたいへん好ましかったです。歌がまた、節度ありながらも起伏に富んだ感情表現で実に素晴らしい。今までこのシリーズに出てきたどの歌手と比べても、ワンランク上の歌唱でした。

間髪入れず後半のゲルネにバトンタッチしましたが、特筆すべきは4曲目の「原光」。「復活」の第4楽章とまるまる同じ曲ですが、これをバリトンが歌うのはたいへん珍しく(しかも、この曲を得意レパートリーにしているコノリーを差し置いて!)、私も初めて聴きました。ところがこれが意外とイケるので驚き。切々と叙情的に歌うバリトンの「原光」は、まさにプリミティブでモノクロームな光を思い起こさせ、伴奏のオケも先日の「復活」のときよりさらに充実していた感じでした。続く少年鼓手の歌2曲は一転してドラマチックな表現になり、ノリノリのオケと相まって、こちらもたいへん良かったです。オペラ向きの人だなあと思っていると、実はどちらかというとリート歌手だと後で知って、二度びっくり。

とにかく今日は初っ端からハイレベルの「角笛」を聴かせてもらい、これだけでもう元が取れた気分です。ところで素朴な疑問。先日の4番ではリュッケルト歌曲集が、今日の5番では角笛が前座でしたが、作曲順からも、内容の関連性からも、曲の長さからも、カップリングは逆にすべきではなかったでしょうか。まあ、歌手のスケジュールとか、いろんな要因もあるのでしょうが。

さてメインの5番が、これまた非常に素晴らしい快演でした。先日の6番ではヘロヘロだったトランペット、本日は冒頭のソロを含めてほぼ完璧な出来。全曲通じて絶好調に見えました。主題提示部では旋律をじっくりコテコテに弾かせ、今にも止まりそうなくらいテンポを落としますが、反復まで終わったら振り落とされんばかりの急アクセルをかけたりして、マゼール先生のイロモノ的演奏は相変わらず。我が道を行くティンパニのスミスさんは本日も説得力のある音をバシバシ叩き出していました。叩き方もさることながら、微妙に張力のバランスを崩したチューニングにその独特の音の秘密があると思います。ただ、1楽章中間部のファンファーレをソロティンパニが弱音でなぞるところではバランス悪いチューニングが裏目に出ていました。スミスさん、弱音が弱点かも?

三部構成というマーラーの構想通り、1〜2楽章は切れ目なく続けます。ここでもスミスさんの「物言う」ティンパニは大活躍。こんだけ好き放題叩かせてもらって、他のオケ、他の奏者ではなかなかありえないことですね。ちょっと休止をはさみ、マゼール先生は水を一杯飲んで呼吸を整えました。そうそう、御大は今日も暗譜でした、若い〜。結局6番だけ暗譜じゃなかったのは、何だったのでしょう?

続く3楽章ではトランペットに負けじとホルンもよくがんばっていました(1音だけ外しちゃったのが痛恨)。4楽章アダージェットは、丁寧に彫り深く、これでもかというくらい歌わせます。非常に芝居がかった演奏ではありますが、今日の5番はそれが逐一うまくハマっていました。アダージェットの最後の音が消え入らないうちに終楽章の開始を告げるホルンが鳴り、怒濤のフィナーレに突入します。ここまで来るとマゼールが別段ヘンなことを仕込まなくても、よくできたフーガなので音楽の力だけで十分に推進力になります。最後の金管コラール以降はまさに圧巻の音の洪水で、たたみかけるようにアチェレランドをかけてジャンと終るや否や、一部の人はもうフライングで「ブラヴォー」連発、満場のスタンディングオベーションとなりました。先の「復活」のときも凄かったですが、今日はそれ以上に充実した内容の演奏会でした。唯一の問題点は、席のせいで「俺のFionaちゃん」がよく見えなかったこと…。

ここでニュース。シリーズ第6弾である日曜日のマーラー3番、独唱のストーティンが喉の感染症のため降板し、代役がコノリーという連絡が。朗報といってはストーティンには気の毒でしょうが、正直今までよい印象がなかったし、コノリーのほうが断然嬉しいです。楽しみが一つ増えました。

コメント

_ つるびねった ― 2011/05/07 17:38

いや〜すごい音楽会でしたね。マゼールさん、変態ぶり満開でわたしもずいぶん楽しめました。マゼールさんの音楽はマゼールさんの音楽だけど、もう文句はありませんっ、って平伏しちゃうくらいの説得力でした。それに今日は我らがスミスさん、大活躍でしたね。音楽をしっかりリードしていたと思います。

そうそう、フィオナちゃんの左後ろで弾いていた人も美人でしたよ。名前分からないので、フィルハーモニアの人かどうかは分からないけど、Miklosさんどう?(とさりげなく浮気を勧めてみる)

_ voyager2art ― 2011/05/07 18:30

ああ、羨ましいです。チケットを買っていたのに、疲れ過ぎていてこの演奏会すっぽかしたんですよ。バリトンの原光も聴いてみたかったですねー。無理してでも行けば良かった・・・

_ Miklos ― 2011/05/08 06:48

>つるびねったさん
スミスさんはこのシリーズ一番の大暴れでした。先の4番とこの5番はセカンド・ティンパニがいないので、遠慮気兼ねなく叩きまくっていたんでしょうかね。
俺のフィオナちゃんの後ろにも美人が?!次回チェックします。もちろん両方私のものです。

>voyager2artさん
出張お疲れさまです。旅が続くと疲労困憊してしまうのはよくわかります。「原光」をバリトンが歌うとは、当日プログラムを見て「あれっ?!!」と思うまで、考えてもみませんでしたが、珍しいものが聴けてラッキーでした。

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_ miu'z journal *2 -ロンドン音楽会日記- - 2011/05/07 09:13

05.05.2011 @royal festival hall

mahler: six songs from des knaben wunderhorn, symphony no. 5

sarah connolly (ms), matthias goerne (br)
lorin maazel / po

いきなりぼくっ娘になっちゃってるけど、フィオナちゃんなんです。わたし的にはフィルハーモニアはティンパニのスミスさんとフィオナちゃんを見に行くための音楽会なんですけど(きっぱり)、わたしがずうっと目を付けてきたおふたりに魔の手が。ブログ仲間のMiklosさんがあろう事か...