フィルハーモニア管/マゼール:マーラー「復活」2011/04/17 23:59

2011.04.17 Royal Festival Hall (London)
Lorin Maazel / The Philharmonia Orchestra
Sally Matthews (S), Michelle DeYoung (Ms)
BBC Symphony Chorus
1. Mahler: Symphony No. 2 "Resurrection"

「マゼールのマーラー・チクルスを厳選して聴きに行く」シリーズ第2弾は、本日もほぼ満席の入り。リターン待ちの列ができていました。場内でも常連さんが多いのか、あちらこちらで「火曜日もいらっしゃるの?」みたいな会話が聞かれて、アットホームな雰囲気です。

プログラムは「復活」1曲のみ。ちょうど1年くらい前に、やはりフィルハーモニア管で聴いて以来です(指揮はインバル)。マゼール御大はニコリともせず厳しい表情で登場。譜面台がないので、この大曲を暗譜でやるようです。さっすがー。第1楽章はかなり遅めのテンポで重厚に始まり、重苦しい雰囲気を引きずったまま、まさに雨の中の「葬礼」のような足取りで進みます。このままで行くのかなと思っていると、突如としてドライブをかけてアチェレランドしていき、他で聴いたことがないようなスピードまで持って行くという驚かしが入るので油断がならんです。この2番は手元にスコアを持っていないのでちゃんと確認はしてないのですが、こんなのは楽譜の指示に忠実にやってるわけではないでしょう。自らの解釈で設定した遅いテンポと速いテンポを強引にアチェレランドで繋いで、スコアを大きく踏み越えた独自の「マゼール界」を築いていますね。

そうは言ってもこの人はしかし、今日もたいへん明朗な指揮で、フレーズの切れ目にはいちいちくるっと指揮棒を丸めてすくい取り、音に対する配慮が非常にきめ細かいです。やってることは小ワザを利かせるというよりむしろアクロバティックな大ワザ連発なわけですが、「神は細部に宿る」という言葉もある通り、技のつなぎ目のさりげないコントロールが全体をうまく引き締めていたのではないかと。それでなくともこの曲は、各セグメントがブツ切れで張り合わされている「ツギハギ音楽」にも見える弱さをけっこう持っていると思いますが、その弱点が全然気に止まらない演奏になっていたのがさすがです。あとは、パートバランスとダイナミクスのコントロールも非常に手堅くまとめられていたこと。かなりしっかりとリハーサルが積まれているように見えました。

メゾソプラノのデヤングは、いろいろとボロが出ていた先日の「さすらう若人の歌」と比べると押さえ気味の歌唱で、面白みがないものの調子は上がっていたように見えました。ソプラノのマシューズのほうは何だか手探りのような歌い出し方で最初はあれっと思いましたが、盛り上がるオケと合唱に引っ張られて徐々に高揚していました。

本日の合唱はPhilharmonia ChorusでもPhilharmonia Voicesでもなく、何故かアマチュアのBBC Symphony Chorus。終楽章の後半、合唱が入ってから後はマゼール先生も小細工は一切せず、この曲が元々持っている音楽の力だけで押し切っていました。それは本当に、素直に感動的な音楽でした。私のマーラー原体験は、レコードではバーンスタイン/NYPの1番でしたが、ちょうど30年前に初めて生演奏で聴いた「復活」の途方もないエネルギーが、自分をマーラーフリークに向かわせた決定的なきっかけであったのを鮮烈に思い出しました。この曲の本来持っている力はやはり凄いものなんだなと、昨年のインバル指揮の演奏会では感じられなかったことが今回再認識できてたいへん満足しました。今日は一人でしたが、家族も連れてくれば良かったと後悔することしきり。

終楽章で出てくる舞台裏のブラスセクションは向かって左にホルンとティンパニ、右にトランペットと打楽器群という風にきっちり左右に振り分けられて不思議なステレオ空間を演出していましたが、マゼール先生もそんなところまで凝らなくてもいいのに、とは思いました。どうせなら舞台上の二人のティンパニも左右に分けてニールセンのように掛け合いっぽくやらかしてくれる指揮者が誰かいないものかと前々から思っているのですが、まだそういう演奏には遭遇したことがありません。なお舞台裏のブラス隊も最後はコーラスの横に出て来て演奏に加わっていましたが、正直、あんまし上手くなかったです。

本日のその他の収穫は、私の席からよく見えた、指揮者の真向かいに座っていた第2ヴァイオリンの色白美人。後で楽団のホームページを調べると、Fiona Cornallさんという人ですね。こんだけチャーミングなのに、うーむ、今まで気付かなかったなあ。以後、注目したいと思います。

コメント

_ つるびねった ― 2011/04/22 05:35

ふふふ、わたしのフィオナちゃん見つけたのですね。Miklosさん、最近、美人プレイヤーに注目ですね。この音楽会はとっても良かったみたいですね。聴きに行けなくて残念です。マゼールさんのマーラー、あまりチケット取らなかったのを今更後悔。

_ Miklos ― 2011/04/22 06:07

見つけてしまいましたよ。これからは俺のフィオナちゃんと呼ばせてもらいます。
マゼール先生のマーラーサイクルは、3つめにして、はや、グロッキー気味です。この先身体がもつかどうか…。

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