BBC響/ビエロフラーヴェク/ブリューワー:マルクスとアルプス2010/12/11 23:59

2010.12.11 Barbican Hall (London)
Jiri Belohlavek / BBC Symphony Orchestra
Christine Brewer (S-2)
1. Wagner: Tannhaeuser - Overture
2. Marx: Songs
 (1) Barkarole (1910)
 (2) Selige Nacht (1912)
 (3) Der bescheidene Schaefer (1910)
 (4) Und gestern hat er mir Rosen gebracht (1909)
 (5) Sommerlied (1909)
 (6) Maienblueten (1909)
 (7) Waldseligkeit (1911)
 (8) Hat dich die Liebe beruehrt (1908)
3. R. Strauss: An Alpine Symphony

BBC響をバービカンで聴くのは初めてです。まずはタンホイザー序曲で小手調べ。いつものかぶりつき席でしたが、パートバランスがたいへん良いですね。音に濁りがなく、端正な音楽作りは好感が持てます。指揮者、オケ共に仕事キッチリ職人タイプで、このコンビももう4年ですか、信頼に基づいた一体感が溢れていますね。

次のマルクス歌曲集で登場したブリューワーは巨漢のソプラノで、見るからにワーグナー歌手です。私は歌曲は大の苦手でして、よほどヘタクソな歌でない限り良し悪しを論評できる素養もないのですが、声量もドラマチックな歌唱も、全く申し分ございませんでした。まさに今日と同じ指揮者とオケでマルクスの管弦楽伴奏歌曲全集を録音しているだけあって、歌を完全に自分のものにしている様子でした。やんやの拍手喝采が鳴り止まず、最後の曲をアンコールでもう1回歌いました。

本日のメインは「アルプス交響曲」、今年はLSOで一度指揮者キャンセルによる曲目変更を食らいましたので、待ちに待ったお目当てでした。ゆっくりめのテンポで焦らずじっくりと開始し、じわじわとテンションを上げて行って、日の出で一気に解放しドカンと鳴らします。ここでもうこんなに鳴らしてしまっては、後半どうするんだろうと思っていたら、山頂と嵐のピークではさらに音量を上げ、期待以上にガンガン鳴らしてくれて、大満足です。当然ですが、最初から全体のフォルムを考えてバランスを取っていってたんですね。トランペットがちょっと苦しそうだったのを除けば演奏技量的にも危ない箇所はなく、アンサンブルには芯の通った安定感が感じられました。会場はたいへん盛り上がってスタンディングオベーションになり、満足げな奏者の表情もグッドでした。

LSOもチケットは安いと私は思いますが、BBC響はさらにその半値くらいで、このクオリティだったら非常に値打ちがありますね。今シーズンもあといくつかは聴きにいく予定ですが、期待が増しました。

BBC PROMS 1: 千人の交響曲2010/07/16 23:59

2010.07.16 Royal Albert Hall (London)
BBC Proms 2010 PROM 1
Jiri Belohlavek / BBC Symphony Orchestra
BBC Symphony Chorus, Choristers of St Paul's Cathedral
Choristers of Westminster Abbey, Choristers of Westminster Cathedral
Crouch End Festival Chorus, Sydney Philharmonia Choirs
Mardi Byers (S), Twyla Robinson (S), Malin Christensson (S)
Stephanie Blythe (Ms), Kelley O'Connor (Ms), Stefan Vinke (T)
Hanno Mueller-Brachmann (Br), Tomasz Konieczny (Bs)
1. Mahler: Symphony No. 8 in E-flat major 'Symphony of a Thousand'

今年のPROMSは生誕150年のマーラー・イヤーにちなんで「千人の交響曲」で開幕です。5月4日のチケット発売開始から2時間で完売してしまった、多分今回で一番人気の高い公演でした。当日もアリーナ、ギャラリーの立ち見席券を求めて、ラストナイトに匹敵するくらい長蛇の行列ができていました。

本当に千人いるんかなとプログラムの名簿を数えてみたら、指揮者1、独唱8、オーケストラ115、バンダの金管14、合唱団はソプラノ126、アルト 104、テナー66、バス96、少年聖歌隊61の、総勢591名でした。以前にブダペストで聴いたときも600人くらいでしたので、このくらいが最近の標準なのかもしれません。とは言っても通常の「第9」演奏会の3倍にはなりますから、その音響空間の迫力は脇の方の席でも十二分に伝わってきました。ただ、やっぱりここのホールは大きすぎます。反響版より上のCircleの席だったのでコーラスとオルガン、それにすぐ背後で鳴り響いたバンダのブラス隊の音量がやたらと大きくて(しかもあんまり上手くない)、バランスが著しく悪かったです。独唱も遠すぎる上にあさっての方向なのでよく聴こえず。それでもあれだけ聴こえていたのだから、正面だと相当熱のこもった良いソロだったのではないでしょうか。

演奏会というよりお祭りのPROMSらしいイベントで、武道館みたいに広いこのロイヤルアルバートホールでも映える選曲かなと最初は思ったのですが、そうは問屋が下ろさず、演奏の細かいところはよくわからないというのが正直なところ。第1部は総じてきびきびと進み、第2部は一転してずいぶんとデリケートになって、そのままペースを上げずにじらしつつ、最後の最後で音量音圧大作戦を炸裂敢行!という感じかと思いました。第1部、第2部ともにエンディングでバンダが加わって盛り上げますが、ギャラリー席に置いたのでステージと距離が開き過ぎてどうしても時間差ができてしまい、いまいちキレが悪かったのが残念です。