インバル/都響:完成された「未完成」と「悲愴」@ミューザ川崎2018/03/31 23:59



2018.03.31 ミューザ川崎シンフォニーホール (川崎)
Eliahu Inbal / 東京都交響楽団
1. シューベルト: 交響曲第7(8)番 ロ短調 D759 《未完成》
2. チャイコフスキー: 交響曲第6番 ロ短調 Op.74 《悲愴》

怒涛のインバル第3弾の最終回は、個人的には自分自身も川崎勤務から離れる最終日に、ミューザ川崎という恰好のお膳立て。今回のインバル3連発はどの曲もそうでしたが、未完成、悲愴ともに聴くのは久しぶりで、未完成は2009年のハイティンク、悲愴は2012年のゲルギエフ、いずれもロンドン響で聴いて以来の超久々です。

未完成は昔からどうも苦手な曲で、好んで聴きに行くことは絶対にありませんので、こういう風におまけ的に聴くことがあるくらいです。苦手な理由は、この曲がまさに「未完成」であることが一つの要因と思います。この後、終楽章あたりで壮大なカタルシスが待っている展開であれば、退屈な前半も捉え方が全然変わってきて、まだ我慢ができるのかもしれませんが、ここで終わってしまうと「え、本当にこれだけ?」と。自分の中の「興味なし箱」の奥底に入れてしまい今に至る、という感じです。そんな程度の関心しかないので、花粉症の薬でぼーっとしていたこともあり、あー今日も重厚に始まったなーと思っているうちに、気がつけば終わっていました。

気を取り直してメインの「悲愴」。昔部活で演奏したことがあり、細部まで一応今でも頭と身体が覚えています。インバルはあまりチャイコフスキーというイメージがありませんが、やはり低弦をきかせ、金管を鳴らしまくるた派手な音作りではあったものの、感傷を極力抑えた理知的な演奏でした。いくつかタメるところを決めて、逆にそれ以外はインテンポで走り抜けるという、インバルならではのメリハリの作り方で、なおかつそのタメる箇所が独特なのが、インバルの個性になっています。第3楽章もオケを相当に鳴らしまくって盛り上がり、おかげで楽章エンドで数人が拍手、しかも一人はブラヴォー付きというオチまで付きました。日本人が、本当につい思わず「ブラヴォー」と叫んでしまう局面って、人生で数回あるかないかだと思うので、その人はよっぽど感動したのでしょうね。ただ、オペラはともかく、悲愴のようなシンフォニーでこれをやられると、その後の緊張感がずいぶん削がれていやな気分が残るので、ブラヴォー言いたいだけの人はもっと場所を選んで出かけて欲しいと、個人的には思います。

おまけ。満開のピークを過ぎた、線路沿いの桜。


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