ティーレマン/ウィーンフィル:極上のブラームス2017/06/09 23:59


2017.06.09 Wiener Konzerthaus, Großer Saal (Vienna)
Christian Thielemann / Wiener Philharmoniker
Dieter Flury (flute-2)
1. Brahms: Academic Festival Overture Op. 80
2. Jörg Widmann: Flûte en suite (2011)
3. Brahms: Symphony No. 4 in E minor

出張のおり、5年ぶりのウィーンフィルを聴くことができました。ティーレマンを見るのは初めてでしたし、コンチェルトハウスも前世紀以来行けてなかったので、グッドタイミングでした。

土日にも楽友協会で定期演奏会があるとは言え、そちらのチケットは入手困難ですし、ティーレマンのブラームスですから、客入りはほぼ満員。席は平土間の脇のほうで、コスパは良かったですが、やはりこのホールは天井が高い分残響が無駄に長すぎて、オケから遠いと音に芯がなくなるのが難点です。


1曲目の「大学祝典序曲」は昔部活で演奏したこともあるノスタルジー曲。イメージ通り、ティーレマンはいかにも融通の利かなさそうな仏頂面のドイツ人でしたが、音楽は見かけによらず軽やかというか、片意地の張らないリラックスしたものでした。ウィーンフィルもブラームスはヘタなものを聴かせるわけにはいかず、ホルンとかいちいち外さないのがたいへん心地よく、あっという間に安心感に包まれました。

続いて、首席をソリストに迎えての、ヴィットマンのフルート組曲。初めて聴きましたが、ラトル/ベルリンフィルも取り上げた注目曲で、コンテンポラリーとしては聴きやすい作風。バロックからの引用もあったり、楽しく聴ける曲でした。こういう曲は本来はかぶりつきで聴きたかったのものですが。

最後はメインのブラ4。たいへんわざとらしいタメを作って冒頭の「嘆きのテーマ」に入ったのは、そういう小細工をいかにもしなさそうなイメージだったので、全く意外でした。ティーレマンは「最後の質実剛健ドイツ人」という先入観のほうがむしろ間違いで、音楽はけっこう緩く、四角四面には当てはまらない流動的なものでした。ダイナミクスのメリハリはそんなに繊細ではなく、あくまでテンポと歌わせ方で起伏を作るスタイルですが、解釈が先にあって細部をコントロールするよりも、元々の音楽の力にまかせて盛り上がりが自然に形成されるという演繹的手法。ある意味、実はこれが伝統的なドイツ流正当ブラームスか、とも思いました。

ティーレマン、汗びっしょりの燃えつき熱演で、最後は上着脱いで登場の「一般参賀」までありました。いずれにせよ、現地で聴くウィーンフィルの音は、日本で聴く普段の演奏会とはやっぱり別格でした。

おまけ。表のマーラーのレリーフも健在でした。


K.ヤルヴィ/MDR響@念願のゲヴァントハウス2017/06/11 23:59


2017.06.11 Gewandhaus zu Leipzig, Großer Saal (Leipzig)
Kristjan Järvi / MDR Sinfonieorchester
1. J. S. Bach: 'Chaconne' from Partita No. 2 for Violin BWV 1004 (arr. by Arman Tigranyan)
2. Max Richter: Exiles (German premiere)
3. Rachmaninov: Symphony No. 2 in E minor Op. 27

ライプツィヒは13年前に訪れて以来の2回目ですが、前回は幼児連れでとても演奏会どころではなかったところ、今回はタイミングよく念願のゲヴァントハウスで演奏会を聴くことができました。オケはやはりゲヴァントハウス管を聴きたかったところですが、あいにくこの日はMDR響(旧ライプツィヒ放送響)。まあでも、ゲヴァントハウス管はロンドンで何度か聴いているし、その昔ケーゲルとの録音がマニアに高評価だったライプツィヒ放送響を生で聴けるとあらば、全く文句はございません。

ライプツィヒの旧市街は本当にこじんまりとしていて、隅から隅まで回っても半日で足りそうです。その一角にあるゲヴァントハウス、外観は13年前と全く変わっていません。正面右隣にあった旧共産圏の匂いをプンプンさせていた建物は、建て替えられてすっかりモダンになっていましたが。コンパクトなホール内は平土間がなく、どの席からもステージがよく見えて、しかも音場が近そうな、まさに私好みのホール。ここに通えるのならこの街に住んでみたい、と思ってしまいました。


さて、日曜マチネの公演の客層はシニア層が大半を占めていました(危惧した通り、補聴器のハウリングが当たり前のように起こっていましたが…)。1曲目は地元最大の著名人、JSバッハの「シャコンヌ」管弦楽版。編曲は1979年生まれのロシア人(ですが見るからにスラヴ系ではなく南方スタン系の人)、ティグラニアン。2管のフルオーケストラを駆使した、奇をてらわない正統派の作りで、金管打楽器もふんだんに使い、派手な演出です。ストコフスキーのバッハ編曲を連想させました。ある意味映画音楽みたいで、作家性はあまりないものの、よい仕事をしていると思います。演奏後、編曲者が登場、挨拶させられてました。

続いて、マックス・リヒターの新作「Exiles」はドイツ初演とのこと。世界初演も今年ハーグで行われており、こちらはパーヴォ兄ちゃんの指揮だったそうです。弦楽器、打楽器、ピアノ、ハープという編成で、全部で30分ほどのスローなミニマルミュージックでした。最初ピアノから始まり、同じメロディを繰り返しながら徐々に徐々に楽器が増えていく、言うなれば現代の「ボレロ」。ミニマル系なので聴きやすい曲ですが、打楽器なぞ25分ごろからやっと登場し、とにかく長い。同じミニマル系でもグラスとかライヒと比べて展開に意外性もなく、先が読める産業音楽に思えました。こちらは作曲家は出て来ず。

メインのラフマニノフ2番は好んで実演を聴きに行く曲の一つですが、昨年は機会がなかったので約2年ぶり。また、ロンドンで何度か聴き「イロモノ系指揮者」(失礼!)との認識を持っていたクリスティアン・ヤルヴィで、まともな交響曲を聴くのは多分初めてです。全体を通しての印象は、自身も指揮台の上で飛び跳ね、踊りつつ、ノリと歌を大切にする音楽作りだなあと思いました。冒頭からねちっこく歌うようなフレージングにもかかわらず、早めのテンポが功を奏し、甘ったるくなる寸でのところで理性を保っています。第1楽章の最後はティンパニの一撃あり。第2楽章の第2主題は逆に、ポルタメントなんかかけなくても十分歌えるわい、と言わんばかりにさらっと流して、決して無理やり作り込むのではなく、奏者をうまく乗せて、自発的に出てくる歌謡性を拾い上げるような感じでした。実際、第3楽章のクラリネットソロはほぼ奏者の自由に吹かせていました。

クリスティアン・ヤルヴィが個性的で良い指揮者なのは実体験済みでしたが、MDR響もさすがは旧東独の名門放送オケでした。オケは常によく鳴っていながらも、弦も管もバランスがよく、どのパートもたいへんしっかりしていて、安心して聴いていられます。アンコールはベートーヴェンの「カヴァティーナ」、心地よい余韻でした。

おまけ。風格漂うクルト・マズアの肖像画がナイスでした。