下野竜也/新日本フィル:涅槃交響曲など、和製現代音楽の古典を聴く2016/05/27 23:59

2016.05.27 すみだトリフォニーホール (東京)
下野竜也 / 新日本フィルハーモニー交響楽団
東京藝術大学合唱団
Thomas Hell (piano-2)
1. 三善晃: 管弦楽のための協奏曲 (1964)
2. 矢代秋雄: ピアノ協奏曲 (1967)
3. 黛敏郎: 涅槃交響曲 (1958)

日本の現代音楽の中では「古典」に相当するこれら3作品でも、実演で聴ける機会は珍しく、CDも持っていないので、各々ほとんど初めて聴く曲になります。開演前のミニコンサートではオケの打楽器奏者がライヒの「木片のための音楽」を披露。プリミティヴに気分を高揚させる効果がありました。

1曲目、三善晃の「オケコン」は、10分足らずの短い時間の中に凝縮された急・緩・急の3部構成で、無調を装いながらもかなり保守的な作りに見えました。指揮棒を持たず手刀で切り込んでいく下野竜也は、縦割りリズムをキビキビと指示し、キレ良くオケを統率。こういう難解ではない部類の現代曲を、さらにわかりやすく紹介するのは、下野の性に合っていると見受けました。オケもリラックスしていて、とてもやり易そう。

続く矢代秋雄のピアノ協奏曲も、全編に渡り無調を貫く音楽ながら、様式は極めて古典的。ミニマル系っぽい反復の連鎖は、時々バルトークのようにパーカッシヴでもあり、緩徐楽章では叙情的にも響き、世間の評判が高くファンが多いのも頷ける佳曲でした。欧州の近現代曲を得意とするドイツ人ピアニストのヘルが、何でまたこんな極東の作品をレパートリーにしているのか謎ですが(公式HPを見るとリゲティ、シェーンベルク等と並んで武満はレパートリーに入っているようですが矢代は記述なし)、アンコールで弾いたバッハを聴いていると、民俗色とか土臭さとかを排除した純粋音楽としてのコアは矢代とバッハで通じるものがあると捉えてくれているのではないかいな、と根拠もなく感じました。

最後は本日のメインイベント「涅槃交響曲」。東京藝大の男性合唱団約80名が奏でる力強い経文がたいへんいい味を出していて、まさに「仏教カンタータ」という異形の音楽をギリギリのところでイロモノからすくい上げているように思いました。フルート、ピッコロ、クラリネット、鈴、グロッケンのバンダその1が舞台を向いて右後方、ホルン、トロンボーン、チューバ、コントラバス、銅鑼のバンダその2が左後方の客席内に各々配置され、幸い今日は平土間前方に座っていたので、3方向からの音響効果を十分に体感し、堪能することができました。この音響空間が作り出す別世界は、確かに実演でなくては理解することができません。新日フィルとしては珍しく、オケも終始しっかりとしており、下野は良い仕事をしてくれたと思います。