パーヴォ・ヤルヴィ/N響:感動薄かった、マーラー「復活」2015/10/04 23:59

2015.10.04 NHKホール (東京)
Paavo Järvi / NHK交響楽団
Erin Wall (soprano)
Lilli Paasikivi (alto)
東京音楽大学 (合唱)
1. マーラー: 交響曲第2番ハ短調「復活」

4月の読響に続き、今年2回目の「復活」鑑賞です。今シーズンよりN響の首席指揮者(chief conductor)に就任したパーヴォ・ヤルヴィのお披露目でもあります。ヤルヴィ家では、お父ちゃんのネーメ、弟のクリスチャンはロンドンで見ていますが、パーヴォは初めて。この3人は各々雰囲気がずいぶんと違いますが、顔をよくよく見るとやっぱり似ていて、ゴツゴツ顔の家系ですね。

さて、そもそもCDを含めてもパーヴォの演奏を聴くのはよく考えると全く初めてなのですが、率直な感想は「ロシアのマーラー」です。やたらとオケが鳴るけど、管の音は濁っているし、ティンパニは必要以上に硬質。テンポはわりと変幻自在に切り替えながらも、全体としての形がよくわからない。解放するより、型にはめるといった感じの終結部にも、私は感動を覚えることはできませんでした。さらにいうと、100人弱ほどの東京音大学生合唱団は、オケに対してパワー不足で、欲を言えば200人は欲しかったところ。ソリストが二人とも素晴らしい歌唱だったのは収穫で、今後彼女らの名前はチェックします。

どうも私はN響とは相性が悪くて、今日の演奏も「感動のないN響」の一つに加えられました。在京オケのマーラーということでは、インバル/都響が一段上でしょう。パーヴォは、ロシアものでもやるときに、また聴きに行ってみようかな。

おまけ。代々木公園で北海道祭りをやってたり、オリンピックプールで久保田利伸がライブをやってたこともあって、原宿駅への道中は行く人帰る人が入り乱れてこのような混雑ぶり。人がぎっしりと詰まり、なかなか前へ進めませんでした。日曜日のマチネはこれがあるから困りますね・・・


世界が先に驚いた、永青文庫「春画展」2015/10/16 23:59


永青文庫「春画展」ホームページ http://www.eiseibunko.com/shunga/

大英博物館の春画展から2年を経て、ようやく本国日本でも、おそらく史上初めての本格的な春画展が開催されております。大英博物館の展示会を見れなかったのは、2年前にロンドンから帰国した際の最大の心残りでしたので、もちろん、喜び勇んで永青文庫に馳せ参じましたとも。

会場となった永青文庫は、普段は細川家が保有する美術品、工芸品や歴史資料を一般公開しているそうで、この春画展が始まるまでは存在すら知りませんでした。目白の閑静な住宅地域の中にあって、ホテル椿山荘の近くですが、けっこう行きにくい場所です。地下鉄の駅から徒歩で行こうとすると登り坂がキツいので、JR目白駅からバスで行くのがよいでしょう。

期間は9月19日から12月23日までで、全体を4期に分け、各々で展示物が変わります。133点の作品リストと各作品の展示時期はHPで確認できます。大英博物館の春画展が300点以上ということだったので規模としては半分くらいですか。展示室は実質狭い3部屋ぽっきりで、予想以上にこじんまりとしたものでした。平日の夕方だったので、混み具合はそれほどでもなく。客層は以外と若い女性が多かったです。

私も実は書物以外で春画を見るのは初めてで、一つ一つがたいへん興味深いものでした。どの作品も描き込みが細かくて、じっくり見ようとするとついガラスケースに額をぶつけてしまって、実際ガラスにはそんな跡が無数に付いていました。単眼鏡で拡大しながら鑑賞している人も多数おりました。

西洋絵画に出てくるナイスバディの理想的男女とは違い、市井の人のある意味リアルな裸身描写と、それでありながら性器だけは様式化された漫画的表現で、ありえないくらい巨大だったりして、深読みせず、まずは単純にユーモアを面白がりました。北斎の版画にびっしりと書き込んである字は、よく見るとたわいもない擬態語、擬音語だったりして、そのおマヌケ感には脱力します。本当は一つ一つをもっと隅から隅までじっくり眺めていたかったのですが、やっぱり周囲の目線もちょっと気になりまして(笑)、ほどほどのところで次の絵に移ると、あっという間に見終わってしまいました。

図録は表紙、背表紙が一切なく、帯を外せばそれが本であるとも思わないくらい変わった装丁でした。まあ、日本では春画をポルノグラフィと見なして雑誌広告にまでクレームをつけたりする人が後を絶ちませんので、配慮をしたのでしょう。ギフトショップで大英博物館のほうの図録がリーズナブルな値段で売っていないかな(売ってたら買おう)と期待したのですが、なんと、元々40ポンドくらいのはずの図録が2万7千円というぼったくり価格だったので見送りました。なお、展示室、ギフトショップも含めて18歳未満は入場禁止でしたが、それはまあ、仕方ないかな。

一度に展示してあるのは作品リストのうち半数くらいなので、あと1回はリピートしようと思っています。


手前が図録です。600ページ超で4000円也、充実した内容と思います。