日本のテレビ番組2013/11/15 23:59

ロンドンではJSTV(欧州域唯一の日本語放送局)は契約せず、ローカルのケーブルテレビだけ契約していましたが、結局日常テレビを見ることはほとんどありませんでした。日本に帰ってきてもリアルタイムの放送を見ることはあまりなくて、ブルーレイレコーダで録画したものを夜中や週末にしこしこと見ていますが、これがなかなか面白い。空白の浦島期間を取り戻すのに多少は役立ってます。

今、家族で毎週ゲタゲタ笑いながらハマって見ているのが2シーズン目の「リーガルハイ」。ぶっとんだ演出と、クサい寸前でホロリとさせるオチを毎回周到に用意している調和的な脚本も見事です。

同じ堺雅人主演で大人気だった「半沢直樹」も、時代劇ばった重厚な作りに思わず見入ってしまいましたが、私的には「リーガルハイ」のほうが後腐れなくてずっと面白い。昨年のシーズン1も、がぜん見たくなりました。

ロンドンでも評判は聞いていて、ようやく見れた前のNHK朝ドラ「あまちゃん」。薬師丸ひろ子と小泉今日子の共演というだけで「これは必見」と思ってしまう世代ですが、実際小ネタのちりばめられた、変わった朝ドラでした。これもたいへん面白く、最終2週あたりのたたみかける展開には感心したのですが、7月半ばという後半過ぎてから見始めたので、その後で総集編などを見ていると、一番よい時期を見逃してしまった感がどうやらします。

で、今やってる朝ドラは「ごちそうさん」。超変化球の前作から一転、ストーリーは大阪製作朝ドラのクラシカルなパターンに戻ったのですが、結局惰性で見続けてます。こちらは「あまちゃん」と比べて出演者に正直魅力はないのですが、ドラマの主題でもある「食」のシーンが非常にそそられます。

食事ネタドラマでは、夏シーズンにTV東京でやってた「たべるダケ」をたまたま見かけて、そのまま毎週見てしまいましたが、問題は出てくる食事が「究極の一品」に映らなかったのと、食べるシーンがお世辞にも上品には見えなかったこと。これは、フードコーディネーターの力量の差なんだろうかと。

「リーガルハイ」の真裏で視聴率に苦戦しているらしい「ダンダリン・労働基準監督官」は、会社の労務担当の人が「見るべき」と言うので録画して見てますが、確かに、空気はヌルいですがけっこう面白い。原作の漫画を読んでないので、先行きが気になるドラマであります。

ドラマはこれ以上見ていると生活が破綻するので、あとは気楽に早送りしながら見れるバラエティ。東京MXの看板番組「ニッポン・ダンディ」は水道橋博士と高橋ヨシキの金曜日のみ見てます。映画秘宝的な蘊蓄は私の大好物、毎週目が離せません。

「マツコ&有吉の怒り新党」は、最後の「新・三大○○」コーナーがサブカル魂全開で面白いので、ここだけ欠かさず見てます。こないだは「新・三大ジョン・ケージ 音楽の常識を覆した楽曲」というのをやってて、そんなネタまで引っ張り出すかと感心しました。

「ベストヒットUSA」、まだ続いているという事実に驚きです。日本のチャートはもうさっぱりわからないですが、世界では今どんなのが流行っているのだろうかと、刺激になります。これすら見なくなったら、ただの懐メロオヤジ一直線ですから。

「世界の日本人妻は見た」というのがこの4月から始まっていましたが、先日のロンドン編では、観光番組ではまず映らないだろうけどめちゃめちゃ馴染みのある風景がいろいろ出てきて、懐かしかったです。

「ジェイミー・オリヴァーの30分クッキング」なんて番組を、妻が今更のように見ております。まあ、吹替えだからわかりやすいというのもありますが、ロンドンで見とけよと。日本じゃ手に入りにくい食材もいっぱい出てきますし。

NHK BSのクラシック中継番組、プレミアムシアターは貴重なライブをいろいろやってくれるので重宝します。先日も、ロイヤルオペラの「湖上の美人」とか、佐渡裕/パリ管など、今年生で見た公演をフルで放送してくれたので、有り難く記念に録画。昔と比べて放送の頻度がだいぶ減ったのが残念です。NHKのクラシック専門ページを見てもテレビ番組がだいぶ品薄になってますが、あんさんとこががんばってくれんと日本の音楽番組は滅びるで、と、エールを送りたいです。

古内東子の弾き語りライブ2013/11/20 23:59

2013.11.20 コットンクラブ (東京)
古内東子 -秘密の調べ-
古内東子 (vocal, piano), 草間信一 (keyboard)

丸の内のコットン・クラブで古内東子のライブがあるというチラシをたまたま見つけ、こんな近場でやってるなら是非見たいものだと、ふらっと行ってみました。古内東子は小松秀行がプロデュースをしていた全盛期のころまではよく聴いていましたが、1998年だから、もう全盛期ならぬ前世紀の話なんですねえ…。

古内東子と中原めいこと松任谷由実にはいろいろと語り尽くせない思い出がまとわりついていて、客観的な評価はなかなかできないのですが、古内東子についてはずっと思っているのが、オーラが全く感じられないこと。デビューのころのビジュアルは拗ねた女子大生風だし、売れたころも、そのへんにいつも歩いていそうなOL風の域を出ない。決して美人とは言えないし、歌が飛び抜けて上手いわけでもない(個性的ではありますが)。ひとえに楽曲の良さで売れてきた人でしょう。前世紀末に恋愛教祖としてブレークしたのは、本人のカリスマ性のなさがかえって好まれたのかとも思っています。

コットンクラブは初めて来ましたが、2005年開業だから日本にいなかったので、知らなくてあたり前か。ブルーノート東京より一回り小さい、アダルトな雰囲気の洒落た箱です。こんな空間が、こんな近くにあったとは。早めに行ったので運良くかぶりつきのテーブルに座れました。念のため持ってきたオペラグラスを使うまでもなくよく見えましたが、そういえばジャズクラブでオペラグラスを使ってる人は、見たことないな…。

公式HPなんかで見る最近のプロモ写真が昔とずいぶん違うので(笑)、もしやお顔がすっかり「変身」してしまったのかと思っていましたら、登場した古内東子はかつての人がそのまま普通に年を召したような、全くの想定内だったので安心しました。相変わらず、オーラはない。昼間は丸の内でOLやってます、と言っても違和感ありません。ステージは、ピアノ弾き語りにキーボードのサポートを付けた、1時間強のこじんまりとしたものでした。アンコールの「ピーチ・メルバ」を除き、バラード中心のまったりとした構成。長い間追っかけてなかったので半分くらい知らない曲でしたが、私のカラオケレパートリーである「逢いたいから」や「うそつき」をモノホンで聴けたのは感動しました。カバー曲コーナーでは、ちょうど来日中のポール・マッカートニー「My Love」なんかも歌っていました。最近はこういう弾き語りのスタイルが多いそうですが、古内東子と言えば血の通ったソウルフルなバンドサウンドも聴きたいもの。今年2月にブルーノート東京でやったデビュー20周年記念ライブでは佐野康夫がドラムを叩いていたようで、帰国前だったから無い物ねだりとは言え、これは見たかったです。ということで、次にフルバンドでやるのはいつの日かと、公式ページのNEWSを追いかける毎日なのでした。

都響/フルシャ:「アルルの女」と「オルガン付き」2013/11/23 23:59

2013.11.23 サントリーホール (東京)
Jakub Hrůša / 東京都交響楽団
小田桐寛之 (trombone-2)
室住素子 (organ-3)
1. ビゼー: 「アルルの女」第2組曲
2. トマジ: トロンボーン協奏曲
3. サン=サーンス: 交響曲第3番ハ短調 Op.78「オルガン付」

フルシャはロンドンで聴くチャンスがいっぱいあったはずですが、今まで逃していました。今更気付いたのですが、現都響の首席指揮者のインバル(前チェコフィル常任)とは「チェコ繋がり」ですね。今日は都響が休日の昼に開催している「プロムナードコンサート」という名曲演奏会で、そうは言っても指揮者、ソリスト、演目は通常の定期演奏会と比べても手抜き感がしないのは好ましいです。目当ては、ロンドンでは結局聴くチャンスがなかったサン=サーンスです。

サントリーホール平土間は超久々でした。2階がかぶさる後方の席は音が良くないという記憶だったのですが、かぶりが浅いため正面だと別段変な反射はなく、また、豊かな残響に負けて振り回されないだけのしっかりした音をオケが出していたのが良かったと思います。都響もえらい久しぶりに聴いたのですが(多分前回は故ベルティーニのマーラー復活)、昔の記憶通り、統率の取れた優秀オケでした。指揮者の力量でもあるのでしょうが、パートバランスが整っていて弱点が目につきません。金管、特にホルンが若干粗い気もしますが、総じて息切れすることなく最後までちゃんと指揮者に着いて行っており、日本のオケにしては珍しく馬力と根性があります。個々のプレイヤーも力があるんでしょうね。団員は都の公務員だから、レッスン等の副業に勤しむあまり本業である演奏活動が疎かになるということがない、のかなあ。私は今は東京都民ではないので税金で直接支える立場にないですが、都知事はこの価値あるな文化事業を絶やすことなくサポートしてもらいたいものだと思います(と書いているうちに、都知事は変わってしまいそうですけど)。

「アルルの女」第2組曲をプロのオケで真面目に聴くのは、初めてかもしれない。第1組曲は昔部活で演奏したことがありますが。特に第2組曲は通俗過ぎる名曲なので軽く流してしまう人も多そうですが、フルシャのリードはたいへんシンフォニックでシリアスなもので、好感が持てました。

トマジのトロンボーン協奏曲は初めて聴く曲で、ソリストは都響トップの小田桐さん。こちらは20世紀の音楽とは言えフランスっぽいエスプリを感じる小洒落た小品でしたが、肝心のトロンボーンがあまりピリッとしなくて、結局何だかよくわからない曲でした。金管楽器のコンチェルトは難しいですね。特に楽団員がソリストをやってる演奏では、楽しめた記憶がありません。ソロで腹くくってやってる人のほうが、サービス精神満載で面白いのは仕方ありません。

メインのサン=サーンスは、久々に聴いたサントリーホールのオルガンがまず素晴らしかったし、演奏効果の上がるよく出来た曲ですので、しっかり盛り上がりました。最後まで頑張れるブラスセクションが居てのことでもあります。このレベルの演奏がいつでも期待できるのであれば、日本の楽団もなかなか捨てたものではありません。というわけで、フルシャ/都響は今後も注目株なのでした。