ロイヤルフィル/ズーカーマン(vn)/ズーカーマン(ms):わびさびのモーツァルトに、父娘共演のマーラー2013/05/29 23:59

2013.05.29 Royal Festival Hall (London)
Pinchas Zukerman (violin-1) / Royal Philharmonic Orchestra
Arianna Zukerman (soprano-2)
1. Mozart: Violin Concerto No. 3 in G major, K.216
2. Mahler: Symphony No. 4

何とこの3年10ヶ月のロンドン生活で、ロイヤルフィルは今日が2回目です。避けていたつもりはないのですが、ROH、LSO、PO、BBCSO、LPOという花形が目白押しのロンドンで、スケジューリングの優先順位が低かったのは間違いない…。

ピンカス・ズーカーマンは私がクラシックを聴き始めたころすでに巨匠でしたが、今になってこうやって目の前で実演を聴く機会があろうとは。しかし、CDを実は1枚も持っていなかったのです。ほとんど初めて聴くズーカーマンは、音が別世界のヴァイオリニスト。現役バリバリの若い人と違うのは(まあ、ズーカーマンもまだ現役ですが)、ガツガツ、ギラギラという擬態語が一切似合わない、あくまで地に足をつけた自然体の音楽で、わびさびの世界に通じる境地を垣間見ました。モーツァルトらしくオケは少人数に絞り込み、力の抜けた心地良いアンサンブル。弾き振りで指揮のみのパートではけっこう軽快にテンポを揺らし、自由気ままに引っ張った「オレのモーツァルト」系演奏でした。

メインのマーラーが聴きたくてこのチケットを買ったようなものですが、ユダヤ人ズーカーマンが導くのは粘り気がなくサラサラした淡白なマーラー。弦は14-12-10-10-8の構成で、もちろん一般的には十二分ですが、昨今のマーラー演奏にしてはちょっと小さめというかミニマムの編成でした。ロイヤルフィルはなかなかがんばっており演奏のキズは少なかったのですが、明るく無邪気でありながらもデリカシーに欠けるマーラー、というのが全体的な感想です。どういうことかと言うと、フレーズの繋ぎにことさら無関心で、まとめ処理を間違ったな、あるいは最初からやらなかったな、という箇所がいくつもあり、音楽がブツ切れになっていました。ズーカーマンは指揮者のキャリアも長いようですが、こういうのを聴いてしまうと、やっぱりこの人にとって指揮は副業か、と見えてしまいます。この曲の命である終楽章を歌うのはズーカーマンの娘、アリアンナでしたが、声も歌唱も正直イマイチ。この短い楽曲で楽譜を見ながら歌っていたので、いかにも慣れてないのがありあり。結局七光りか、とお客に思わせてしまってはイケマセン。



なかなか恰幅のよい娘さんでした。パパさんはとっても嬉しそう。