ミハイロフスキー・バレエ/セミオノワ/マトヴィエンコ:ジゼル2013/03/28 23:59


2013.03.28 London Coliseum (London)
The Mikhaillovsky Ballet: Giselle
Valery Ovsyanikov / Orchestra of the Mikhailovsky Theatre
Jean Coralli, Jules Perrot, Marius Petipa (choreography)
Nikita Dolgushin (production)
Polina Semionova (Giselle), Denis Matvienko (Court)
Vladimir Tsal (gamekeeper), Ekaterina Borchenko (Queen of the Wilis)
Anna Novosyolova (Giselle's mother), Roman Petukhov (armor-bearer)
Alla Matveyeva (Court's fiancée), Marat Shemiunov (Duke)
Sabina Yapparova, Anton Ploom (peasants' pas de deux)
Asthink Ogannesian, Valeria Zapasnikova (Wilis' variations)
1. Adam: Giselle, ou Les Wilis

ミハイロフスキー劇場バレエが隔年くらいでやっているロンドン公演に初めて行きました。ここは、日本では「レニングラード国立バレエ」という名前でほぼ毎年ツアーをしているお馴染みの団体。ちょうど5年前に東京国際フォーラムまで「白鳥の湖」を見に行って以来です。そのときの印象から、まあこちらを見に行く時間があったらロイヤルに行こうと思っていたので今まで避けていましたが、今回は「ジゼル」「ドン・キホーテ」といった未だに舞台で見ていない演目をやってくれるというのが、思い立った第一の動機です。そしてふたを開けてみたら、なかなかどうして、捨てたものではありませんでした。

プロダクションはロイヤルバレエよりもさらにトラディショナルな感じで、素朴な懐かしさを呼び起こします。公爵役は当初ABTのマルセロ・ゴメスでしたが怪我のため元プリンシパルのマトヴィエンコに変更。ジゼルのポリーナ・セミオノワも今はABTのプリンシパルなので、今日はゲストを軸にした配役だった、というのは言っておかねばなりません。私は、何度も見ているロイヤルのダンサーはともかく、バレリーナには全然詳しくないので、プロファイルなども後付けで色々と調べているだけですが、今日のセミオノワは一目でワールドトップクラスだと感じました。細身の長身が表出する動きの一つ一つがいちいち隙なく美しい。ステップやフェッテの安定感は言うまでもなく、ジャンプも高く、第1幕最後の狂乱の場面は渾身の熱演で、演技力も突出してます。すらっとした身体から、第一人者の貫禄が溢れ出ていました。他のプリンシパル、マトヴィエンコやボルチェンコも素晴らしかったと思いますが、終わってみればひときわセミオノワだけが印象に残ってしまってます。

実は「ジゼル」を見るのは初めてでした。現代に上演されるバレエの中でも最も古いグループに属する古典中の古典バレエですが、確かにそれらしく、第1幕では途中話の本筋が中断して延々と踊りが続くところは間延びして眠くなりました。群舞はそれほど上手いと感じなかったのも要因の一つでしょうか。第2幕はずっと舞台が暗くて単調なのでさらに目が辛く、すいません、ほとんど沈没気味でした。オーケストラは出だし音がちょっと汚いなと思いましたが、演奏自体はROHのオケと比べたらずいぶんとしっかりしたものでした。


セミオノワ(左)と、ウィリの女王役のボルチェンコ、この人もプリンシパルですね。


ミハイロフスキー・バレエ/オーシポワ/ワシーリエフ:ドン・キホーテ2013/03/30 23:59


2013.03.30 London Coliseum (London)
The Mikhaillovsky Ballet: Don Quixote
Pavel Bubelnikov / Orchestra of the Mikhailovsky Theatre
Marius Petipa, Alexander Gorsky (original choreography)
Nina Anisimova, Igor Belsky, Robert Gerbek, Kasyan Goleizovsky,
Fyodor Lopukhov (featured choreography), Mikhail Messerer (staging)
Natalia Osipova (Kitri), Ivan Vasiliev (Basilio, a barber)
Marat Shemiunov (Don Quixote), Alexey Kuznetsov (Sancho Panza)
Philip Parkhachov (Lorenzo), Pavel Maslennikov (Gamache, a nobleman)
Evgeny Deryabin (Espada, a toreador), Valeria Zapasnikova (street dancer)
Sabina Yapparova, Anna Kuligina (flower girls, Kitri's friends)
Olga Semyonova (Mercedes), Irina Kosheleva (Queen of the Dryads)
Veronica Ignatyeva (Cupid), Roman Petukhov (Duke)
Alexander Omar, Mariam Ugrekhviladze (solo in Gypsy dances)
Kristina Makhviladze, Alexey Malakhov (Fandango)
Asthik Ogannesian, Anna Kuligina (variations)
1. Minkus: Don Quixote

ミハイロフスキー・バレエの第2弾。今日のプリンシパルはオーシポワ、ワシーリエフの元ボリショイ組。このペアは一昨年の夏にアシュトン版の「ロメオとジュリエット」で見ていますが、当時はまだミハイロフスキーに移籍する前だったんですね。「ドン・キホーテ」は初めて見ますが、飛んだり跳ねたり系のシンプルに楽しいバレエとのことで、全身バネのようなこのペアには打ってつけと思ったら、正に期待以上のもの凄さでした。

オーシポワは開始早々バッタのようにぴょんぴょんと飛び跳ね、息が乱れることもありません(少なくとも私にはそう見えた)。全く軸のぶれない回転は、フェッテの加速が効き過ぎて回転数が足らないどころかむしろ1〜2回は余計に回ってそうな勢いです。終始明るく健康的でスポーティなダンスは、バレエとしてはかなり異形なのかも。表情の作り方など、ほとんどシンクロナイズドスイミングのようでした。お相手のワシーリエフも負けじと、カエルの足のような太股を駆使した跳躍力を発揮し、アクロバットな飛び技を連発。いちいちやんやの喝采を浴びていました。身体能力にかけては本当に超人的なこの人達が息もぴったりに繰り広げるデュエットは他の追従を許さず突出していました。二人にとってもオハコであるし、好きなんでしょう。苦もなく楽しそうに大ワザを決めていく二人を見ていると、この演目をこのペアで見れて本当に良かったとしみじみ思いました。しかしこの人達にも弱点はあって、第3幕のグラン・パ・ド・ドゥでは、もちろんここでも技巧は超人的なのですが、スポーティな凄さだけでは魅力ある踊りを組み立てられないのが露呈してしまったようにも見えました。とは言え、脂の乗ってる今しか見れない、素晴らしい「ドン・キホーテ」であったのは間違いありません。オケは今日もしっかりしていて、ミハイロフスキーは今後も要チェックであると確信しました。


顔だけ見てるとヤンソンスとドゥダメルが並んでいるように見えますな。



踊りはないものの、ドン・キホーテとサンチョ・パンサもいい味を出してました。

三越ラーメンバー2013/03/31 23:59

昨年から「ラーメン激戦区」と言われているロンドンに、今年2月から参戦してきた大物、三越のラーメン・バー。三越のレストランで食事したのははるか昔の一度きりなので記憶がおぼろげですが、ここはかつて寿司バーだった一角ですね。噂はちらほら耳に入ってきたものの、「一点張」の店長がプロデュースしていると知り、かなり行く気が減退しておりましたが、出かけるついでがありましたので、まあ一応行っておくかと。

店内はさすがに元寿司バーだけあって、他のどの店よりもネイティブジャパニーズな感じです。ラーメンは大きく、とんこつ醤油ベースのロンドンラーメン、味噌ラーメン、つけ麺の3種類があります。


これはロンドンラーメン。一点張と比べても、かなり魚介の香りが表に立っているスープです。これは苦手な人がいるかも。私は悪くないと思いましたが、味がだいぶ塩っぱかった。麺は細麺で、一点張と同じかな。固めに茹でてあり、最初はコシがありますがすぐに伸びてきます。


こちらは、けっこうイケると聞いたので頼んでみたつけ麺。ラーメンとは違い、うどんのような極太麺です。「日本製法で作られた極太麺を直輸入」と書いてあったので、裏を返せば「日本から直送」ではないんでしょう。私はつけ麺を特に好んで日本で食べていたわけではないのでつけ麺の真髄が何かは知らないのですが、この麺はちょっとコシがあり過ぎです。朝鮮冷麺をさらに太くしたような食感で、噛み砕くのに必死、麺食の官能がありません。熱々のつけ汁はベースのスープに何か味噌を加えていて、鰹の香りがふわっと立ち上りました。ただし、具が冷たいのでつけ汁はすぐ冷めます。麺を食べ終わったあと、頼めば割り下(ベースのスープ)をくれるので、残ったつけ汁をそれで薄めて飲んでもかまいません。スープは悪くないです。


餃子は…。うーむ、一点張と同じかなあ。どうしてこう、パリっと感がないんだろうか。まあ、こんなものは食えねえ、とちゃぶ台ひっくり返すほどではありません。

感想は、まあロンドンのラーメンとしては、「真面目度」においてBone Daddiesと並ぶ上位クラスでしょう。一度はどうぞ、と勧めておきます。私は当分行かないと思いますが。

最近日系のフリーペーパーに製麺機の輸入業者の広告が載ったりしていますので、ロンドンでラーメン屋の新開店が今後さらに続くかもしれません。そのことと、この三越のつけ麺でこだわっていた「日本式製法麺を直輸入」というスタイルに太い道筋ができれば、ロンドンのラーメン業界にも「麺の可能性」がより広がる期待が見えてきた、というのが今回の収穫と言えましょうか。