LSO/ハイティンク/ピレシュ(p):極東ツアーの前哨戦を10分の1の価格で2013/02/12 23:59

2013.02.12 Barbican Hall (London)
Bernard Haitink / London Symphony Orchestra
Maria João Pires (piano-2)
1. Britten: Four Sea Interludes from 'Peter Grimes'
2. Mozart: Piano Concerto No. 17, K. 453
3. Beethoven: Symphony No. 7

来月同じプログラムで日本ツアーに出かけるからでもないでしょうが、今日はやたらと日本人聴衆の多い日でした。かく言う私も、日本公演のチケットがS席3万円(日本の外タレ公演は酷いことに、ほとんどの席が「S」です…)と聞いて、同じものが10分の1の値段で聴ける環境をめいっぱい享受しようと思い慌ててチケット買ったクチです、はい。

しっかりした足取りでハイティンク登場。この人を見るのはこれで8回目ですが、今まで見た中で一番元気そうかも。すぐに極東ツアーを控えた御大ですから、体調が良さげなのはグッドニュースです。正直好きな指揮者じゃなかったのでレコード、CDは多分1枚も持っていませんが、この人の真価はライブにありということをロンドンに来てから発見しました。1曲目「4つの海の間奏曲」はイギリスでは定番のショートピース。これは意外にもゴツゴツとえげつない演奏だったので驚きました。小洒落たまとめ方には一切興味がなく、オペラ「ピーター・グライムズ」の本質を踏まえた悲痛な重厚さが一貫して漂っていました。

ハイティンクとピレシュの取り合わせを聴くのはこれで3年連続です。モーツァルトの27番、20番と来て今日は17番。先ほどのブリテンとは一転し、角の取れた伴奏に徹していたハイティンク御大とLSOでした。音のアタックを極力抑え、ビブラートも制限せずに、むしろオーボエ、フルートの木管楽器は実に瑞々しくロマンチックなアンサンブルを聴かせてくれました。ピレシュはいつものごとくツヤツヤに粒の揃ったドライなピアノで、粗探しも野暮以前に粗が無いし、高みに達した音楽家二人だからこそ成し得た境地に酔うしかなかったです。


メインのベートーヴェン第7番は今年で初演から200周年の記念イヤー。各所で演奏機会が増えることでしょう。ザ・巨匠のハイティンクが迷わず突き進んできた、粘ったり煽ったりが一切ない直球勝負のベートーヴェン。特筆すべきは、小細工なしにスコアの音楽を引き出しているだけなのに、何という躍動感よ!音楽そのものの力とは言え、ハイティンクがここまで「ロック」な演奏の出来る人とは思っていませんでした。もっと常に重い人かという印象でした。ハイティンクが指揮台に立てば、LSOだろうがどこだろうが、いつものように最大級のリスペクトで奏者が指揮者に着いて行く。本当にハッピーな老後を過ごしている人と思います。体調に不安はなさそうですし、LSOは相変わらず上手いし、日本公演は大いに期待できるんじゃないでしょうか。