ロイヤルオペラ/カンパネッラ/アラーニャ/クジャク:ドニゼッティ「愛の妙薬」2012/11/16 23:59

2012.11.16 Royal Opera House (London)
Bruno Campanella / Orchestra of the Royal Opera House
Laurent Pelly (director and costume designs)
Aleksandra Kurzak (Adina), Roberto Alagna (Nemorino)
Fabio Capitanucci (Belcore), Ambrogio Maestri (Dulcamara)
Susana Gaspar (Giannetta)
Royal Opera Chorus
1. Donizetti: L'elisir d'amore

6月の「ラ・ボエーム」以来ですから、久々のロイヤルオペラです。図らずもアラーニャ続きになりました。実は「愛の妙薬」はアラーニャ/ゲオルギュー/リヨン歌劇場のDVDを持っているのみで、実演は初めてなので楽しみにしていました。

まず開幕前にマイクを持ったおねえちゃんが登場。客席が一瞬静まり返り、ため息も聴こえました。しかし、懸念した歌手(特にアラーニャ)のキャンセルではなく、ベルコーレ役のカピタヌッチが体調不良だが薬を飲んで何とか歌う、ということでしたので、とりあえず一安心。

アディーナ役のクジャクは今年2月に「フィガロの結婚」のズザンナで聴いています。ぽっちゃり系で愛くるしい表情に加え、今日のパンツの見えそうな(というか、見えてた)蓮っ葉衣装ではコケティッシュでむっちりとした色気が増殖されていました。「お高くとまったお嬢さん」という設定をあえて外した演出にきっちり合わせていたという点で、たいへん良い仕事でした。

喉の調子が懸念されたカピタヌッチは、マエストリらと一緒に歌えば確かに声量は劣っていましたが、歌唱は特に危ないところはありませんでした。むしろアラーニャのほうがちょっと鼻声で心配したのですが、かえって甘いテナーがさらに甘くなって、ネモリーノには打ってつけでした。ただしリヨンのDVDを見慣れていると、アラーニャもずいぶんオヤジになってしまって、第2幕の酔っぱらいメイクなんか、まんまバカボンのパパという感じ。遺産を相続することが分かって急にモテモテになっても、太めのおばちゃん達(オペラ歌手ですから…)にもみくちゃにされるパンツ一丁の酔っぱらいオヤジは、全然うらやましくない(笑)。

詐欺師ドゥルカマーラ博士は、今年ファルスタッフを歌っていたマエストリ。相変わらずずっしりと腹に来る太い声で、コミカルな演技も冴えていました。ただし、詐欺師にしては身なりもプレゼンも地味なので、あっさり騙される村の人々が哀れです。

歌手陣が総じて良かったのに加え、オケがいつになく軽快で無理のない演奏。まあ、金管に負担を強いる曲ではなかったのが幸いしました。指揮者のカンパネッラは初めて聴きますが、イタリアオペラの第一人者だったんですね。よく見るとうちにある「チェネレントラ」のDVD(バルトリ主演)でもタクトを取っていました。

今日は右側バルコニーボックスからの鑑賞でしたが、歌手の立ち位置が右側に寄り過ぎの演出だったため、たいへん見にくかったです。道理で左側ボックスが先に売れていたわけだ。演出家は、もうちょっと左右のバランスを気にしてくれたらと思います。


明るい色気のぽっちゃりクジャク。


オヤジの色気、アラーニャも上機嫌。