ROHヤングアーティスツ:バスティアンとバスティエンヌ、モーツァルトとサリエリ2012/10/17 23:59

2012.10.17 ROH Linbury Studio Theatre (London)
Meet the Young Artists Week: Performance
Pedro Ribeiro (Director)

ROHの若手アーティスト達によるミニオペラ2本立て。オペラハウスの地下にあるリンベリー・スタジオには初めて入ります。普段はバレエにしろオペラにしろモダンな演目ばかりやってる印象だったので敬遠していたのですが、今回はモーツァルトがキャリア最初期の12歳で作曲したオペラと、そのモーツァルトの死を題材にしたオペラという面白い取り合わせだったし、これなら18禁ということはなかろうと安心し、家族揃って見に行きました。最初に会場の印象を言うと、ステージが近くて見やすいし、音の通りもよいので、小規模作品の上演にはちょうどよいんではないでしょうか。


1. Mozart: Bastien und Bastienne
Michele Gamba / Southbank SInfonia
Paul Wingfield (Continuo)
Dušica Bijelic (Bastienne), David Butt Philip (Bastien), Jihoon Kim (Colas)

このオペラは6年前にウィーン国立歌劇場の子供向けオペラで観ました。元は太陽が降り注ぐコルシカ島の農村が舞台ですが、この演出では何故か深夜の線路上。羊飼いの娘バスティエンヌはみすぼらしい格好で羊の乗ったトロッコを押して出てきます。歌はくぐもっていて、音程もちょっと危うい。ソプラノよりはメゾに向いてる太さの声です。続いて登場する魔法使いのコラはこれまた浮浪者のような風貌の酔いどれ電気技師。バスティエンヌにちょっかいを出しては肘鉄を食らうという「泉谷しげるキャラ」でしたが、この韓国人は非常に良い声でした。バスティアンも含めて、皆その若さがこの若書きオペラにはマッチしていました。一方のオケはどの場面も淡々と演奏していて、ちっとも盛り上がらない。若いのに熱いものがないのは問題で、技量的にもまだまだ未熟という印象でした。


2. Rimsky-Korsakov: Mozart and Salieri
Paul Wingfield / Southbank SInfonia
Michele Gamba (Continuo)
Pablo Bemsch (Mozart), Ashley Riches (Salieri)
Jette Parker Young Artists (Offstage chorus)

映画「アマデウス」でもお馴染みの、サリエリによるモーツァルト暗殺説は、元をたどればプーシキンの戯曲がルーツだそう(もちろん噂話はサリエリ存命中から存在しました)。その戯曲を原作にしたこのリムスキー=コルサコフのミニオペラも「都市伝説」を流説するのに一役買っています。前半に輪をかけて、大道具のほとんどないシンプルな舞台美術に、登場人物は二人ともスーツにネクタイのビジネスマンルック。彼らを「モーツァルトとサリエリ」だと言われても、やっぱり違和感は思いっきり残ります。また、今日のキャストだとサリエリのほうが全然若くてハンサムに見え、嫉妬する説得力が薄いのも難点でした。歌はどちらもよく通る美声で良かったです。マリオネットを使ってみたり、レーザービームで指だけ光らせる演出は、お金がない中で工夫してがんばっているという感じ。殺風景ですが、よく出来た演出ではありました。

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