2012プロムス41:今年の超大作その2、シェーンベルク「グレの歌」2012/08/12 23:59


2012.08.12 Royal Albert Hall (London)
BBC Proms 2012 PROM 41
Jukka-Pekka Saraste / BBC Symphony Orchestra
Angela Denoke (S/Tove)
Simon O'Neill (T/Waldemar)
Katarina Karnéus (Ms/Wood-Dove)
Neal Davies (Br/Peasant)
Jeffrey Lloyd-Roberts (T/Klaus the Fool)
Wolfgang Schöne (Speaker)
BBC Singers
BBC Symphony Chorus
Crouch End Festival Chorus
New London Chamber Choir
1. Schoenberg: Gurrelieder

昨日に引き続き、大作プログラムの連チャンです。「グレの歌」は無調に傾倒する前のシェーンベルク初期の代表作で、マーラー「千人の交響曲」に匹敵する大人数を要するので有名です。完成したのは「千人」の初演が大成功した翌年、つまりマーラーの没年(1911年)ですから、時代がこういう超大曲を求めていた、ということでしょうか。私がほぼ初めてこの曲を聴いたのは6年前のブダペストでギーレン/南西ドイツ放送響の演奏会だったのですが、一体どんな凄い曲だろうとワクワクしていたら、全奏で音圧がマックスになるのはほんのわずかの時間で、大半は室内楽的なものすごくエネルギー効率の悪い進行だったのに思いっきり肩透かしを食らいました。

指揮は元々は常任のビエロフラーヴェクが振るはずが、2週間ほど前にサラステに変更になりました。サラステは颯爽と格好の良いドライブ感が魅力の人で、期待通りにドラマチックでロマンチックな表現が、私には好ましかったです。BBC響も穴が無く最後まで集中力の切れない演奏はさすが。前に聴いた南西ドイツ響は貧弱な音色に白けた(淡々とドライ、とも言えないことはないですが)演奏が、「現代音楽の雄にしてこの程度か」と、がっかりした記憶が蘇りました。

演奏者数はオケもコーラスも昨日のベルリオーズのほうが多かったです。女声コーラスなんか、2時間近く待って最後の最後しか出番がないのでかわいそう。ヴァルデマール王役のテナー、サイモン・オニールは今年の正月の「マイスタージンガー」でも見ました。そのときは風邪で調子が悪かった(ということだった)のですが、この人は結局普段から声が弱く遠くまで届かない、ということが今日よくわかりました。アリーナの立見でかぶりつきでもない限りヴァルデマール王の歌を堪能するのは無理でした。トーヴェを歌うアンゲラ・デノケは2年前にROHで「サロメ」を聴いて以来でしたが、こちらは細い身体ながらコアのしっかりした歌唱で、表現も演奏に引きずられてか劇的で、聴き応えがありました。第一部終盤に歌う山鳩のカルネウスも切々とした情感が秀逸。しかし第一部が終ると出番の済んだ女声陣二人は退場し、代わりに出てきた農夫、道化師、語り手の野郎どもはどれも印象に残らず。語り手のシュプレヒ・シュティンメ、これだけはギーレンのときのほうがずっと上手かったです。

最後は音量もクライマックスに達し、それなりに盛り上がりますが、カタルシスというほどでもなく、頂点に登る手前でふっと力を抜くような終り方です。休憩なしで2時間たっぷり演奏しましたが、お尻が痛かったので休みが欲しかったです。お客さんの入りは残念ながらイマイチで、特にサークルは空席ばかりでした。みんなオリンピックの閉会式を見ていたのかな。



ピンボケしまくりですが、オニールとデノケ。