2012プロムス18:バレンボイム/WEDO:五輪開幕を告げる歓喜の歌2012/07/27 23:59


2012.07.27 Royal Albert Hall (London)
BBC Proms 2012 PROM 18
Daniel Barenboim / West–Eastern Divan Orchestra
Anna Samuil (S), Waltraud Meier (Ms)
Michael König (T), René Pape (Bs)
National Youth Choir of Great Britain
1. Beethoven: Symphony No. 9 in D minor, 'Choral'

バレンボイム/WEDOのベートーヴェン・チクルス最終はもちろん「第九」でした。ロンドンオリンピック開会記念でもあるこのコンサートは開始時間が6時半と早く、交通機関の混乱は予測がつかないので、時間通り人が集まるのか不安でしたが、開演ギリギリで何とか客席は埋まっていました。コンマスのマイケル君は緊張したのか、まだ指揮者が登場しないのに楽団を立たせてしまって一度座り直すという段取りミスがあり、照れ隠しで大げさに頭を抱えていました。

前の2回はコーラス席でしたが今日は歌があるので正面のサークル席を取りました。アルバートホールはやっぱり残響が長過ぎて、ステージから遠いと何が何だかわからなくなってきます。さらには上がってきた熱気のおかげで空気が暑く、「暑がり」の私にはなかなか辛いものがありました。

踊るように陽気な7番、8番から一変して、今日はまたゴツゴツと古風な男らしいベートーヴェンに戻っていました。打てば響くようなオケではありませんが、暖かみと若いエネルギーが武器です。今日はコーラスも英国ナショナルユース合唱団の若者約200名という大所帯だったので、アラブ、イスラエル、英国というよく考えると微妙な取り合わせの若者達が仲良く「第九」を演奏するという図式になっていました。コーラスは男声の厚みが足らなかったので、大胆に人数を増やして欲しかったです。

歌手陣は、ルネ・パーペが期待通り張りのある良い声で、オペラチックな歌い方も彼なら許せるところですが、ちょっと音程の危ういところがあったのが残念でした。メゾソプラノのマイヤーもビッグネームですが、第九のこのパートはほとんど目立つところが無いのでどうしても割を食ってしまいますし、この人も何か喉が暖まり切ってない感じでピッチが低め。ソプラノのサムイルは一人ミュージカル歌手のようなキンキン声で浮いており、私の好みでもありませんでした。結局一番手堅かったのは急にキャンセルになった(理由不明)ペーター・ザイフェルトの代役で借り出されたミヒャエル・ケーニヒでした。この人、今年のバイロイトで刺青降板騒動のあった例の「さまよえるオランダ人」にもエリック役で出演しているんですね。

このように細かいところを見ていけば決して最良とは言えない演奏でしたが、祝典の賑わいとしては十二分に役目を果たすもので、楽しめました。「第九」1曲だけだったので、終ったらまだ夜の8時。突如降り出してきた大粒の雨に、今週はこんだけ天気が良かったのに開会式を狙い撃ちして降るとはさすがイギリスの天気、と感心してしまいました。


独唱は左からサムイル、マイヤー、ケーニヒ、パーペ。立ち位置はオケの後ろ、合唱の前でした。


このあとバレンボイムは、退場する楽団員一人一人に声をかけていっていました。