LSO/ゲルギエフ/フレミング(s):シェヘラザードとペトルーシュカ2012/07/15 23:59


2012.07.15 Barbican Hall (London)
Valery Gergiev / London Symphony Orchestra
Renée Fleming (S-2,3)
1. Debussy: La mer
2. Henri Dutilleux: Le temps l’horloge (UK premiere)
3. Ravel: Shéhérazade
4. Stravinsky: Petrushka (1911 ver.)

LSOのシーズンフィナーレは「フレミング効果」で早々にソールドアウトになってしまったため、私もずいぶん後になってからリターン狙いで、普段なら買わない高い席を選択の余地もなくゲットしました。

1曲目はドビュッシーの交響詩「海」。ゲルギエフはその外見のむさ苦しさと相反して、意外とフランスものを得意としていますね。繋ぎ目なしで一気に流した演奏は繊細の極致で、オケの集中力も素晴らしかったです。トランペットもホルンも完璧で惚れ惚れしました。オケが良いのは当然として、ゲルギーの細部を彫り込む解釈とコントロールも冴えていて、上手く言えないのですが、極上の鮮魚を切って並べただけでなく、一仕事も二仕事も入っている究極の寿司、という感じですか。

続いて待望のフレミング登場。オペラ、演奏通じて実は初めて見ます。デュティユーの歌曲「時と時計」はフレミングのために2007年に作曲され、小澤征爾指揮サイトウキネンオケとの共演で松本にて初演されました。UKでは今日が初演。二管編成にハプシコードやアコーディオンも加わる幻想的な曲で、つかみどころのない不思議なオーラを放っています。デュティユー(ってまだ現役なんですねー驚き)の曲はほとんど聴いていませんが、フレンチテイストのようでいて、仏教にも通じる「無の境地」を感じます。フレミングは表現力に卓越した歌手に思えましたが、この耳に新しい曲だけではまだ何とも。


休憩後、再び登場のフレミングで今度はラヴェルの歌曲集「シェヘラザード」。この曲は音源を持っておらず、2004年のブダペスト以来8年ぶりに聴きま す。意味深な歌詞にラヴェルの熟達した管弦楽法が絡み合ったオシャレな佳作です。フレミングの歌はそりゃー上手いし、繊細だし、情緒もありましたが、声自 体は普通で、私の好みとはちょっと違うかなと。オペラはもう大劇場でスポット的にしか出てないようですが、もうちょっと若いころは声に厚みがあってさぞ舞 台映えするソプラノだったんだろうと思います。チケット争奪の激しさを考えると、どうしてもまた聴いてみたい歌手とは思えなかったです、すいません。


最後の「ペトルーシュカ」は1911年版。今シーズンのストラヴィンスキーシリーズの最終でもあります。オケ奏者的にはイラっとする曲ばかり続いたせいで最後に集中力が切れたか、あるいは単なるリハ不足か、だいぶアラが目立ちました。トランペットのコッブは珍しく音を外すし、もっと珍しいのはティンパニのトーマスも1小節飛び出してしまう大ポカをやらかし、何だか落ち着きがありませんでした。本来は主役で活躍するはずのピアノも何だか地味で引っ込んでいて、ちぐはぐな「ペトルーシュカ」でした。ゲルギーのアイデアは豊富でいろいろとやらかそうとするけれど、まだオケと一体化していないんじゃないかという印象です。ペトルーシュカはできたら舞台付きで見たいものです。人形劇では見ましたが、一度バレエで見てみたいですなー。