ウィーンフィル/ラトル:3番と6つとまた3番の危険な関係2012/06/17 23:59

2012.06.17 Barbican Hall (London)
Sir Simon Rattle / Wiener Philharmoniker
1. Brahms: Symphony No. 3
2. Webern: Six Pieces for Orchestra
3. Schumann: Symphony No. 3 ('Rhenish')

1年以上前に発売になったこの演奏会ですが、人気のラトルに天下のウィーンフィルという最強布陣にもかかわらず、一番上のチケットで£85という前年よりずっと高めの値段設定がアダとなって、直前まで席はけっこう売れ残っておりました。しかし最終的には、この通向けのプログラムにしてソールドアウトとは、やっぱりさすがはウィーンフィルと言うべきか。

まず最初のブラームス。1番、2番、4番は何度も聴いているのに3番は何故か縁がなく、実演で聴くのは初めてです。弦楽器はヴァイオリンを対向配置にして、その間に向かって左にヴィオラ、右にチェロ、その後ろにコントラバス、金管は左から順にトロンボーン、トランペット、ホルンという、あまり見たことがない変則配置でした。第1楽章はラトルがオケを激しく揺さぶって、冒頭から早速バラけ気味。その厳しいドライブに、オケが振り落とされそうな箇所がいくつか見受けられました。自らが率いるベルリンフィルでは多分こんなことはないのでしょうが、客演でも容赦ないラトルの棒の下、非常に危ういバランスで音楽が成り立っていました。あっけに取られていると、第2楽章からはだいぶ落ち着いてきて、木管、ホルン、トランペット、そしてもちろん弦の、素晴らしい「ウィーンフィル・サウンド」が心地よく響いてきます。ロマンチックな第3楽章は私の耳には意外とあっさり走り抜け、すっかりエンジンの暖まった頃合の終楽章はラトル節が全開、と言いたかったところですが、やっぱりアンサンブルのバラけがどうも気になって、画竜点睛とは行きませんでした。面白かったけど、ちょっと座りの悪いというか。ベルリンフィルとの細部にまで神が宿るような演奏が理想とすると、客演のラトルはまたちょっと別の楽しみ方で聴くのが吉かも(去年のLSOでもそういう感想を持ちました)。

休憩後のヴェーベルン「6つの小品」は、大編成の管弦楽なのに積分音量は微小という、エネルギー効率の悪い曲です。ラトルはウィーンフィルにここまでやらせるかというくらい、ヒステリックにアクセントを強調し オケも鋭い反応で答えて、冷徹ではなく血の通ったヴェーベルンになっていました。また、金管、打楽器の上手いことと言ったら。第4曲の打楽器クレッシェンドはどうせならもっと耳をつんざくくらいまで鳴らして欲しかったですが。

メインの「ライン」も個人的にはほとんど聴くことがなく、あれこれ語るネタもないのですが、ここまでの危ういバランスとか鋭いアクセントとかは影を潜め、速めのテンポで颯爽とさわやかな演奏だったと思います。オハコなんでしょう、アンサンブルの完成度が半端ないです(それを言ったらブラームスもオハコのはずですけどねえ)。特に素晴らしかったホルンの音色を基点に、全体がまろやかに溶け合う陶酔感。無心で入り込むことが出来る、自然派体感系の音楽でした。今日はブラームスが良かったとおっしゃる人が多かったようですが、私は「ライン」の成熟度のほうに感銘を受けました。


ホルンまでわざわざ歩いて行って奏者を称えるラトル。



皆さん、いい笑顔です。

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