王立音楽大学交響楽団:バルトーク+シマノフスキの渋過ぎるプログラム2011/10/25 23:59

2011.10.25 Queen Elizabeth Hall (London)
Mikk Murdvee / Royal College of Music Symphony Orchestra
Meng Yang Pan (P-2)
1. Bartók: Divertimento
2. Szymanowski: Symphony No. 4 (Symphonie concertante for piano & orchestra)
3. Bartók: Two Portraits
4. Bartók: Four Orchestral Pieces

王立音楽大学の学生オーケストラによる、バルトークの比較的マイナーな作品を揃えたマニアックなプログラム。先週のタカーチ・カルテットと同様、フィルハーモニア管の主催するバルトークシリーズ“Infernal Dance: Inside the world of Béla Bartók”の一環になっています。いくら音楽のプロの卵とは言え、アマチュアオケでこの選曲は渋過ぎます。まあおかげでブダペストでもめったに聴けなかった曲をこうやってロンドンで聴けるのだから感謝です。ただ、客入りはせいぜい半分に満たない程度で、しかも出演者の家族・友人など多分内輪ばっかり。さながら私はシブい選曲に釣られて紛れ込んだ部外者のヘンなオジサンでありました。

今回クイーン・エリザベス・ホールで初めてフルオーケストラを聴きましたが、ステージは以外と奥行きがあり、もしかしたらウィーン楽友教会より広いかも。ただ、ろくな反響板はなく、そこかしらに照明がつり下がっていて、音楽ホールとしてはベストと言えませんね。

1曲目は「弦楽のためのディヴェルティメント」。「弦チェレ」と並んでパウル・ザッハー/バーゼル室内管のために作られた最盛期の傑作とされていますが、フルオーケストラの演目にはめったに乗りません。王立音楽大学オケの弦楽アンサンブルは、もちろん若い奏者ばかりですが、幅広いニュアンスが表現できていて、驚くほど上手かったです。そんじょそこらの日本のプロオケじゃあ、かなわないかもしれません。コンマスはErzsebet Raczというモロにハンガリー系の名前のちょっと恰幅の良いお嬢さんで、この人も十分にプロのソリストの音を出していました。指揮者はエストニア出身の若手で、今年からフィルハーモニア管でサロネンのアシスタントをしているそうです。師の指導をどのくらい受けたのか、構造の見通しの良い、手堅くまとまった演奏になっていました。もしかしたらこの渋い選曲もサロネンの意向だったのかも。

次はシマノフスキの交響曲第4番(あるいは協奏交響曲)。一応うちのiTunesにも入ってましたが、ほとんど初めて聴く曲です。パーカッシヴなピアノがバルトークに通じる作品とも言えるでしょうか。ピアノ独奏はパン・メンヤンという26歳の、いかにも中国のベッピンさんという感じの華奢な女性でした。しかしその細い腕から想像つかないパワフルな打鍵が意表をつき、技術的にはこの人も相当上手かったです。曲が曲だけにこれだけで判断するのも何ですが、テク命でガンガン弾きまくるところばかりが印象に残りました。フル編成になったオケは、ブラスがちょっと弱い感じ。一方木管のソロはたいへん達者でプロ顔負け。指揮者はここでもバランスをうまくまとめ、盛り上げる山場を心得ていました。職人肌かもしれません。


ピアノのパン・メンヤンさんは見とれそうな美人でした。右端はコンマスのラーツさん。

休憩後の「2つの肖像」の1曲目は、作曲者の生前はお蔵入りしていたヴァイオリン協奏曲第1番の第1楽章ほぼそのもので、コンマス嬢がふくよかなソロを奏でます。もちろん非常に上手いのですが、テクニック以外は何も考えずに弾いている感もちょっとありました。最後の「4つの小品」だけは以前にブダペストでも聴いたことがありましたが、演奏会のメインに持ってくるにはあまりに渋い曲。華々しく終るわけでもないので、さすがにこの長丁場ではちょっと盛り下がり感もありました。音楽を志す集団の気骨は評価し、これらの曲を素晴らしい演奏で聴けたことに感謝もしていますが、アマチュアオケの演奏会なんだから、指導の先生はもうちょっと空気読まんかい、とは思いました。

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