バイエルン放送響/ヤンソンス/内田光子(p):顔芸の女帝2011/03/25 23:59

2011.03.25 Royal Festival Hall (London)
Mariss Jansons / Symphonieorchester des Bayerischen Rundfunks
Mitsuko Uchida (P-1)
1. Beethoven: Piano Concerto No. 3
2. Richard Strauss: Ein Heldenleben

バイエルン放送響は2003年5月以来ですから約8年ぶりの2度目です。まず最初はベートーヴェンのピアノ協奏曲第3番。実はほとんど初めて聴く曲です。内田光子をこれまで聴いたのは全部モーツァルトでしたので、ベートーヴェンは果たしてどうかと思いきや、芸風は基本的に同じでした。タメが多いギクシャクした進行で、エネルギーは常に内向きの凝縮度の高いピアノです。演奏中はもちろん、伴奏を聴いてるときでも顔をくしゃくしゃにしながら音楽に入り込むその姿はまさに「顔芸の女帝」。今日はベートーヴェンなのでモーツァルトのときよりも打鍵が力強く、ドラマチック度が増した演奏になっていました。聴衆大喝采。

前半のオケはピアノを引き立てることに徹した控えめなものでしたが、後半はヤンソンスが得意とするところの大編成曲。リヒャルト・シュトラウスはバイエルン放送響の「ご当地もの」とも言えますので期待度大だったのですが、旅の疲れが残っていてボーっとしてしまい、もう一つ演奏に入り込めなかったのが残念でした。ヤンソンスはいつものように指揮棒を左右に持ち替えながら巧みにオケを操っていきます。突出した何かがあるわけではないですが、アンサンブルはほとんど穴がなく、よくまとまっています。弦はけっこう地味な音で、コンセルトヘボウほどのパンチはありませんが、ドイツものには向いているでしょう。金管、木管も派手さはなく堅実な演奏でした。木管はもうちょっと華があっても良いかなと思いました。ヴァイオリンソロを弾いた若いコンマスは逆に、めちゃめちゃ上手い上に音に芯と華もあって、凄かったです。この人は全くソリストのヴァイオリンですね。

アンコールは「ばらの騎士」のワルツ。ブダペストでコンセルトヘボウを聴いたときもやってくれた曲です。ヤンソンスはだいたいアンコールを2曲くらいやってくれるのですが、今日は1曲だけでした。次は是非、本拠地のヘラクレスザールで聴いてみたいものです。