ロンドンフィル/ユロフスキ/ケレメン(vn):久々のハンガリアン・ヴィルトゥオーソと、嘆きの歌2011/01/29 23:59

2011.01.29 Royal Festival Hall (London)
Vladimir Jurowski / London Philharmonic Orchestra
Barnabas Kelemen (Vn-2)
Melanie Diener (S-3), Christianne Stotijn (Ms-3), Michael König (T-3)
Christopher Purves (Br-3), Jacob Thorn, Leo Benedict (Treble-3)
London Philharmonic Choir
1. Ligeti: Lontano
2. Bartók: Violin Concerto No. 1
3. Mahler: Das klagende Lied

土曜日の公演のせいか、こんな地味なプログラムにもかかわらず客入りは上々でした。隣席のオーストラリア人の若者は1曲目のリゲティが目当てだったらしく、興奮気味に「日本の音楽も大好きなんだ、一柳とか武満とか」などと話しかけてきました。この「ロンターノ」、演奏が始まるまですっかり忘れていましたが前にも聴いたことがありました。どこで聴いたかすぐに出てこなかったので、「2001年宇宙の旅」の曲だったかなあ、などと考えながら聴いていましたが、後で検索するとブダペストで、エトヴェシュ/スイスロマンド管の演奏で聴いていたんですね。でも、「2001年」と同時期の作曲で、トーンクラスタを効かせたいかにも未知の宇宙空間っぽい音楽ですので、混同するのも無理はない(と、言い訳)。

この日の目当てはもちろん、ハンガリーの人気ヴァイオリニスト、ケレメン・バルナバーシュでした。2006年3月以来ですから、ほぼ5年ぶりです。今でもまだ32歳ですから若いですが、その童顔は5年前とほとんど変わっていませんでした。糸巻きの部分を握って楽器を前に突き出すように持ちながら登場するのも、右足でリズムを取りながら、顔の表情豊かに、時折この上なく幸せそうな表情を浮かべながら弾くさまも、全然変わっておらず懐かしかったです。そういう意味では、あまり進化はしていないとも言えます。テツラフとか五嶋みどりなどの異次元の人達を聴いてしまったあとでは、音が少々野暮ったく、洗練されていないようにも感じましたが、そこはハンガリー人ヴァイオリニストとしては一種の「味」で通用するでしょう。ただ、この人のハンガリーでの人気は相当なもので、国内の演奏会や、同じくヴァイオリニストの奥さん(コカシュ・カタリン)と組んだ夫婦デュオの演奏会と録音、さらにリスト音楽院での教職も得ていますから、あえて国外に打って出なくても国内で十分食べて行けるし、実際にあまり外で活動していないように見えるのが以前から非常にもったいないと感じていました。その意味で、たまにはこうしてロンドンにまで遠征に来てくれるのはたいへん嬉しいことです。演奏のほうは、得意のバルトークだけあって短い中にも語り口を知り尽くしています。距離を離れず曲の中に没頭するロマンチックな演奏でした。アンコールはバルトークのソロソナタから終楽章(プレスト)と、バッハのサラバンドの2曲もやってくれて、会場は大いに盛り上がっておりました。

メインの「嘆きの歌」は、実演は初めてで、CDもHungarotonの古い録音を以前ブダペストで買ったものしか持っていませんが、このCDは2部構成の短縮版だった上にあまり聴いておらず、実際ほとんど馴染みのない曲でした。そもそもカンタータとか超苦手なのでどこまで起きていられるか心配でしたが、若書きとは言え天才の斬新な力作なので飽きることなく最後まで聴け、後世の「マーラー節」も断片的に垣間見えて面白かったです。ユロフスキの指揮は、昨年聴いた交響曲第4番のようなミニマルなアプローチは取らず、ハープ6人、別部隊のブラスも20人以上という巨大編成を上手く整理して劇的な仕上がりに仕立てていたと思います。曲の最後の唐突な一撃は、6番のラストの原型ですね。

余談ですが、今日気付きましたがロンドンフィルは金髪美女が多いですね。ビジュアル的楽しみも今後増えそうです。