BBC PROMS 34: ベルリン・ドイツ響/メッツマッハー2010/08/10 23:59

2010.08.10 Royal Albert Hall (London)
BBC Proms 2010 PROM 34
Ingo Metzmacher / Deutsches Symphonie-Orchester Berlin
Leonidas Kavakos (Vn-2)
1. Schreker: Der ferne Klang - Nachtstueck
2. Korngold: Violin Concerto
3. Mahler: Symphony No. 7

メッツマッハーは今シーズン限りでベルリン・ドイツ響の音楽監督を退任するそうで、このプロムスが最後の演奏会になるようです。それにしては、地味めのプログラムのせいか空席がけっこう目立ちました。「ロマンス」を「ノクターン」で挟み込むというこの選曲は一本芯が通っていますが、フェアウェルコンサートにしてはちょっと渋過ぎですかね。

今回は行けなくなった別のプロムスのチケットと交換で入手したという事情もあり、妥協してクワイヤ席になったのですが、これが意外と音響が良いのに驚きました。程よい残響と自然な楽器の音が好ましく、指揮者、奏者の顔もよく見えますし、上の方のサークル席よりよっぽど良かったです。今年はもう遅いですが、来年もプロムスを聴くチャンスがもしあれば、このクワイヤ席をひいきにしたいと思いました。

1曲目は初めて聴く曲でした。世紀末作曲家シュレーカーは世代で言うとシェーンベルクとベルクの間、あるいはラヴェルとバルトークの間に位置しますが、その誰よりもロマン的で折衷的な音楽でした。オケは音的にはちょっと田舎風というか、アカ抜けない濁りを感じましたが、メッツマッハーのタクトの下(指揮棒は使っていませんが)、全体としては禁欲的ですっきりした響きにまとめられていたと思います。

カヴァコスを聴くのは4回め。昨年のプロムスでも聴きましたが、ますますマッチョなヴァイオリンになっている気がします。正直、女性的、というと語弊があるなら叙情的なコルンゴルトのコンチェルトでは、ヴァイオリンが雄弁すぎて微妙な感じでした。最初の2楽章は、あくまで繊細にまとめようとするメッツマッハーと噛み合ずちぐはぐな印象も受けましたが、終楽章は重点的にリハをしたのでしょうか、打って変わってスイング感に溢れたノリノリの協演になっていました。しかし、この人のテクニックはいつ聴いても凄いです。ただ、アンコールで演奏した「アルハンブラ宮殿の思い出」のヴァイオリン独奏編曲版はやりすぎというか、確かにこの曲を弾けるのはほとんどあんたしかおらんやろうけど、そこまでせんとも、もっと弾いて聴かせて楽しい曲はあるやろうに、と、かつてボリス・ベレゾフスキ(だったかな?)のピアノを聴いたときと同じ感想を思ってしまいました。

メインのマーラーは輪郭のはっきりとしたモダンな演奏でした。現代ものが得意なだけあって音の交通整理ができている上に、ティンパニまで含めてチューニングがしっかり合わせられているので、メリハリも活きてきます。管楽器のソロが派手にコケる箇所もありましたが、まあご愛嬌。集中力を感じる好演でした。ギターとマンドリンは最初ステージに出ていなかったのでどうするんだろうと思っていたら、4楽章直前に登場、マンドリンは何と2ndヴァイオリン最後尾の奏者が持ち替えで弾いていました。ティンパニは珍しく逆配置(ドイツ式)で、終楽章冒頭のソロは本来その方が演奏しやすいはずですが、マレット同士をカチンと当ててしまい、奏者の顔が見る見る赤らんで行きましたがこれもご愛嬌です(真面目な人なんですね)。

私に取って7番はマーラーの中でも聴く頻度の高くない曲ですが、途切れない集中力に、こちらも最後まで引き込まれてしまいました。現代ドイツの保守本流とはまさにこのようなものかと。解消するのがたいへんもったいないコンビですね。メッツマッハーさんは今後どうするんでしょうか?

コメント

_ つるびねった ― 2010/08/14 07:02

ふふふ、ほんと、近くだったのかしら。
コルンゴルドの協奏曲についてはわたしは正反対の感想を持ちました。この曲ってわたしは、むしろ男性的って感じるのです。なぜかわたしのなかで対をなしてるバーバーの協奏曲と比較してしまうからでしょうか。カヴァコスさんはマッチョと言うよりとっても繊細に聞こえます。この人、ほんとテクニック凄いですよね。アンコールはわたしももっと賑やかな曲を演って欲しかった気もしますが。でも、あの曲、弾ける人って滅多にいなさそう。

ティンパニやっぱり逆だったんですね。なんかいつもと違うと思っていたんですが、確信が持てずにいました。マレットをぶつけたのは気がつきませんでした。まだまだ修行が足りないです。ちなみに小太鼓の音が重くて好きでした。

_ Miklos ― 2010/08/14 09:27

確かに、コルンゴルトとバーバーのヴァイオリン協奏曲は対で扱われることが多いですよね。緩-緩-急という構成が似ているし、どちらもアメリカン・ハリウッドの香りがありますし。私に取ってはどちらも「女性的」な曲なんですが(シベリウスのコンチェルトをイメージします)、よく考えると今まで聴いた演奏はCD、実演含めて全て男のヴァイオリニストだなあ…。

私の印象だと、カヴァコスは聴くたびにゴリゴリ弾く野性味が強くなってきている気がしています。過去何度も共演したブダペスト祝祭管の友人に聞いたところでは、ここ数年の間に楽器がストラディヴァリに変わり、指揮活動もやるようになって、自信満々な演奏スタイルがますます強化されたとのことで、これは私の感想と一致してました。元々テクニックは相当ある人ですから、もちろん繊細な味付けなんかも難なくやってしまえるんでしょうね。

チューニングがずれてるとか、ティンパニが逆配置とか、マレットぶつけたとか、テノールホルンが1音とちったとか、そんなことばかり気にしないでもっと本質を論じたいとはいつも思うんですが、気になるとやっぱり書き留めちゃって、そのわりには大局がどうだったか、忘れてしまうんですよね。いかんです。小太鼓はきっちりクローストフォームで叩いてましたし、総じてティンパニ、打楽器はみなさん基礎がしっかりして上手でした。

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_ miu'z journal *2 -ロンドン音楽会日記- - 2010/08/14 07:42

schreker: der ferne klang -nachtstück
korngold: violin concerto
mahler: symphony no. 7
leonidas kavakos (vn),
ingo metzmacher / deutsches symphonie-orchester berlin @royal albert hall

プロムです。前回のマーラーの交響曲第3番に続いて、第7番。昨日のゲルギーとワールド・オーケストラの第4番と5番を外して、マイナーな第7番。だって好きなんだもん。マイナーだけに客席には空席がそこここにありました。7...